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がんばっていきまっしょい。

脚本「雨が降ってる。」

こんにちは。

今回の脚本は下記の掌編を脚本化したものとなります。

a674.hatenablog.com

脚本化のお手本のような作品ですね。惚れ惚れします。ええ。
よろしくお願い致します。
ちなみにいま人前に出しても恥ずかしくないかなと思えるものをカクヨムに纏めています。誰も来てくれず枕を濡らしているので是非是非お越し下さいませ。

小説(あしなむ) - カクヨム

 

【題材】 姉妹(兄弟)

タイトル:「雨が降ってる。

(人物)

永原歩(16)高校二年生
氷月鳴(14)中学三年生
氷月乃亜(14)(回想時)中学二年生

 

 

〇高校寮・外観
   雨が降っている。水溜まり。鮮やかな黄色の長靴が水溜まりを大きく撥ねる。

〇同・永原自室
   布団に寝転がりぼんやりと天井を見つめている永原歩(16)。雨音が響いている。
   ドアがノックされる。
永原「いいよ、入って」
   ドア開く。花とパンダ柄の子供っぽいレインコートに身を包んだ氷月鳴(14)が入ってくる。
鳴「やぁ、降ってるね外。びしょびしょだ」
永原「その割には楽しそうだね」
鳴「そう? 買ったばかりの長靴が履けたからかな。ほら」
   手に持つ長靴を見せる。鮮やかな黄色。
永原「鮮やかなイエロー」
鳴「そう、心躍るようなね」
   レインコートのボタンを外し始める。
永原「でもちょっと子供っぽくない?」
鳴「そうかな? そうでもないと思うけど。お姉ちゃんだって昔はよくこういうの履いてたし。あ、でも昔って事は子供っぽいのかな? まあいいじゃん好きなんだから」
   レインコートを脱いでしまう。   
永原「……どうでもいいけど傘にしたらいいのに。あのお気に入りの大人びた水色の傘はどうしたの?」
鳴「あんなのもう捨てちゃったよ、いつの話してるの? 今はレインコート派なの、雨を感じたいからね」
永原「雨を感じる?」
鳴「そう、雨を感じる。ねえ、レインコートと長靴ここに置いてもいい?」
永原「あ、うん」
   鳴、二つを玄関先に置く。
鳴「じゃあ、おじゃましまぁす」
   鳴、入って丸いちゃぶ台の前に腰を下ろす。永原、タオルを渡す。
   キッチンで紅茶をカップに入れ、渡す。
永原「煎れといたやつ。まだ熱いよ」
鳴「ありがと」
   鳴、紅茶を啜る。
鳴「あちっ!」
   舌を出してひいひい言う。
永原「大丈夫? 見つからなかった?」
   永原も腰を下ろす。
鳴「うん、見つからなかった。男子寮潜入ミッション、無事コンプリートしました」
   ブイ、と決めてみせる鳴。

   ×  ×  ×
   (フラッシュ)
   ブイ、と決めてみせる氷月乃亜(14)。
   決めてみせた後、照れて破顔する。
   ×  ×  ×

永原「…………」
鳴「……どうしたの?」
永原「……いや」
鳴「…………ふぅん」
   じぃっと永原を見つめる。
永原「髪、伸びたなぁと思って」
鳴「ああ、伸ばしてるもんね。だってあー君ロングのが好きでしょ?」
永原「え、そんな事ないよ」
鳴「いいよ知ってるから」
永原「いや、本当に」
鳴「じゃああー君覚えてる? 私が思い切ってショートにしてきた時、あー君ずっとぼんやりしてたんだよ? 二週間も。凄く挙動不審になってさ」
永原「…………いや」
鳴「お姉ちゃんと一緒にずっと伸ばしてたから、この際ショートにしてみようかなって思ってそうしたんだけど、あー君はさ、それを受け止めきれなかったじゃん。私だけの問題じゃないんだよこれは。あー君の為でもあるの。私と付き合うまでのあー君死んでたもん。私、あんなのもう見たくない」
永原「…………」
鳴「ねえねえ、後でお鍋食べよう? あー君とはまだお鍋つついたことなかったよね?」
永原「鳴」
   鳴を見据える。
永原「ねえ鳴、そういうのはよくないよ、よくない。僕が好きなのは鳴であってあいつじゃないんだから、あいつはもういないんだから、だからいいんだよそういうのは。鳴は鳴らしく僕と一緒にいてくれよ」
鳴「ありがと。でもいいから」
永原「ねえ鳴」
鳴「だってあー君私にキスする時お姉ちゃんにキスするつもりになってるでしょ?」
永原「…………なに言って」
鳴「ほら即答できなかった」
   鳴、紅茶をズズズッと啜る。
鳴「あちっ!」
   舌を出してはあはあ言う。

   ×  ×  ×
   (フラッシュ)
   紅茶を啜る乃亜。
乃亜「あちっ!」
   舌を出してはあはあ言う。
   ×  ×  ×

永原「…………」
鳴「いいよ、知ってるから。似てるもんね私達、本当にとってもよく似てる。でも嫌じゃないんだよ、私、お姉ちゃんの事大好きだったし、お姉ちゃんの事が好きなあー君も大好きだったから」
永原「…………そんなの」
   目を伏せる永原。
   鳴、永原に寄り添い頭を肩に乗せる。
鳴「私はいいもん、あー君が、求めてくれるなら……」
永原「……鳴」

〇(回想)神社・大木の下
   緊張の面持ちの乃亜。永原。
乃亜「ね、ねぇ歩……」

〇(回想)神社・大木の下
   緊張の面持ちの鳴。永原。
鳴「ねぇ、あー君……」
   唇をキュッと噛む。まっすぐ見据えて。
(鳴に乃亜の姿が重なって)
鳴・乃亜「私と、付き合って下さい。」

〇(回想終わり)高校寮・永原自室
永原「…………ごめん」
   鳴、少し寂しげな顔で。
鳴「……やめてよ」
永原「…………」
鳴「…………よしっ!」
   膝を叩いて立ち上がる。
鳴「さて、じゃあ鍋の材料買ってこようかな。ちょっと待っててねあー君、すぐ戻るから」
   永原、立ち上がり。
永原「僕も行こうか?」
鳴「いいよ雨なんだし。一人でいいよ」
永原「そう? なんだか悪いな」
   鳴、レインコートのボタンを留めながら。
鳴「あー君は雨音でも聴いてうとうとしてて。膝を抱えて、まるでお母さんのお腹の中にいるみたいに」
永原「なにそれ」
   長靴を取り。
鳴「雨の日の二度寝こそ至福だよ。ばいばい」
   ドアを開ける鳴。左右を確認し、走る。
永原「…………」
   永原ドアを閉め布団に寝転がる。雨音が響く。
   目を瞑り、大きく息を吐く。

〇同・階段前
   廊下を曲がった所で立ち止まる鳴。
鳴「………………すん」
   俯いて目をこすり、小さく鼻を鳴らす。

〇(回想)住宅街
   雨降りの中、永原(14)、乃亜(14)、鳴(12)が歩いている。乃亜は花とパンダ柄の子供っぽいレインコートに身を包み、鮮やかな黄色の長靴を履いている。鳴は大人びた薄い水色の傘をさしている。
乃亜「えいっ!」
   ジャンプして水溜まりを跳ね上げる。
鳴「もう、お姉ちゃん子供っぽい~」
乃亜「そう? いいでしょこれ。ほら、このレインコートに長靴、似合うでしょ? この鮮やかなイエロー、心躍らない?」
永原「似合うけど、レインコートだと顔にかからないか?」
乃亜「フフッ」
   手で顔を拭う乃亜。
乃亜「いいの、これで。雨を感じたいからね」
永原「雨を感じる?」
乃亜「そ、雨を感じる。傘よりレインコートの方が雨をいっぱいに感じられるでしょ?」
永原「はぁ?」
鳴「もう、また変な事言って……普通に傘にすればいいのに」
乃亜「いいの! レインコートの方がウキウキするんだから!」
   笑顔で空に手を広げてクルクルと回る。
永原「ウキウキって」
鳴「こんな雨なのにウキウキなんてしないよ」
永原「俺も、晴れのがいいけど……」
鳴「ね」
永原「うん」
乃亜「もう、雨を楽しもうっていうこの気持ちがわからないの?!」
   苦笑する永原と鳴。

〇(回想終わり)高校寮・永原自室
   目を開いている永原。布団の上膝を抱え丸くなっている。雨音が響いている。
永原「…………っ」
   ギュッと目を瞑り、一層丸くなる。
  
〇高校寮・外観
  雨が降っている。水溜まりに撥ねる雨。