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趣味の徒然うつらつら(2016年他ブログより移転)

RPG世界に於ける「魔物」の私的定義

少し前、僕はJRPG世界を下敷きとした小説を書きました。その時にふと疑問に思ったのが「果たして魔物ってなんだ?」ということでした。

その作品の主人公はいわゆる「魔王」と呼ばれる存在で、必然的にそこを突き詰めて考えざるおえなかったのです。

皆さんはこの「魔物」という存在をきちんと考えてみたことはありますか? 

その正体を、定義を一言で言い表すことはできますか?

僕にはできませんでした。魔物って獰猛な動物と何がちがうの? そんなレベルでした。

昨今いわゆる「なろう系」と呼ばれるファンタジー世界での冒険活劇を描いた作品が隆盛を極めています。もちろんそんな作品群の中でも魔物は描かれるわけで、僕らは当たり前のようにそれを享受しています。

 

でもじゃあ魔物って何?

 

考えました。考えて、一つの結論が出ました。

それは「魔物とは、異世界からの侵略者である」というものです。

 

魔物はこの世界のおける熊や虎や蠍などの獰猛な生物とはちがいます。魔物とは「魔の物」なのであり、つまり邪悪な存在であるわけです。どうして邪悪なのかというと、この世界を侵略しようとしているからです。

全然調べてないのでツッコまれると危ういのですが、かのイギリスの古典ファンタジー「指輪物語(ロードオブザリング)」でも冥王が存在し、世界征服を目論んでいるようです。その配下である魔物も主人公達に襲いかかるようです。世間一般でいうところの魔物の想像力の源はこのあたりの古典的ファンタジー群に依るのだろうとは思うのですが、これを日本で爆発的に広めたのはファミコンで発売されたドラゴンクエストです。

 

ドラクエもこういった勇者が敢然と悪(魔王)に立ち向かう図式を用いており、これによって日本で魔物という概念が普及しました。これは疑いようのない事実であり、ドラクエJRPG(Japanese Roll Playing Game)の始祖、その後のJRPGドラクエを下敷きとし発展してきたと言ってよいと思います。それくらいの影響力がありました。世界的には指輪物語でも、日本では圧倒的にドラクエなのです。ドラクエが僕らに魔物という想像力を植え付けました。

 

ドラクエはごくシンプルに「魔王から世界を救う勇者のお話」を描きます。シリーズ全てに同等の存在が登場します。ここでの魔王は「世界を征服せんとする者」として定義され、フィールドでエンカウントする魔物はもちろん「魔王の配下」です。つまり言い換えれば原住民VS侵略者の戦いなわけで、勇者は原住民代表として時に星の意志に導かれたり応援してもらったりしながら侵略者をやっつけていきます。(魔物は異次元からやってきたと思われる。魔物の語源は魔界からやってきた生物なのだろう)

 

で、話は戻るのですが、となればやはり彼らは獰猛な生物とはちがうわけです。何故なら人間と魔物は戦争のまっただ中、彼らは明確に人間を敵視しているからです。フィールドを歩いていると文字通り襲われるわけで、殺るか殺られるかの戦いとなるわけです。彼らは動植物のようにただこの世界で生きているわけではない、明確な侵略の意志を持って存在しています。

 

この大前提、一見すると当たり前のように思われるかもしれませんが、ところがどっこいけっこうみんな忘れてます。だってじゃあなんでファイナルファンタジーには魔物が存在するかと考えたことはありますか?

例えばFF7なんてラスボスはセフィロスという人間?ですが、フィールドにはゴブリンやらサボテンダーやら魔物がうじゃうじゃいます。でもセフィロスと魔物は関係がないわけです。となると魔物達が「侵略者」として定義されなくなり獰猛な生物と変わらなくなってしまいます。

ドラクエ以降、FF7に限らずこういう明確な魔王が存在しない、ラスボスの征服意図も曖昧というJRPGは多々あるはずです。(多くは世界を救うで一致するとは思いますが)でも僕たちは「魔物なんでいるの?」とは思いません。それはRPGのお約束であり「そういうもの」であるとわかっているからです。

 

あくまでも魔王が存在するからこそ魔物が存在する、少なくとも侵略の意図があるからこそ魔物は存在できる。

ではそういう世界観ではなく、この世界に元から存在する生物としてフィールドで出くわす彼らはどう定義されるのか。彼らはやはり獰猛な生き物と同等なのか?

いいえちがいます、彼らはそこでは「モンスター(怪物)」と呼ばれます

 

魔物とモンスターは厳密に言うとちがいます。魔物は魔の物でなくてはならず、モンスターはただ怪物であればいいのです。異形の者とも言えるかもしれません。ドラクエのような侵略者を倒すお話以外でフィールドで出くわす彼らは、モンスターであり魔物ではないのです。

 

おっとっとっとっちょっと待て、ドラクエでも「モンスター」という呼称は採用されているぞ。ドラゴンクエストモンスターズというゲームはどう説明するんだ?

 

はいその通りです。ですが同時に「まもの使い」という職業も存在します。ということは、ドラクエ世界の中では魔物=モンスターともいえることになります。

実際のところ、ドラクエ世界においては呼称など問題にはならず、どちらで呼んでも構わないでしょう。ですが僕が考えているのは「侵略者としてのモンスターか、原住民としてのモンスターか」ということでして、僕の定義によれば侵略者としてのモンスターに限り「魔物」と呼ばれるに値する、そういうことになります。

ドラクエはもちろん侵略者としてのモンスターなので魔物であると、そういうことになります。

 

お前はいったい何を言ってんねんと思われてそうですが、これは僕にとっては重い結論であり、この結論を導き出せなければとても魔王を主人公に据えた小説など描ききることはできませんでした。

 

転生物などJRPG的想像力を下敷きとした物語が隆盛を極める昨今、その敵対する者が「魔物」なのか「モンスター」なのか、そこから作品を読み解いてみるのもまた一興かもしれません。(最近では灰と幻想のグリムガルというアニメをこの視点から楽しみました)

魔物とモンスター、この分類を皆さんもぜひ意識して頂けたらと思います。(そうか?)

 

※ちなこちら言及した魔王が主役の自作です。→ 俺が魔王であるために。

 

文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)

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