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がんばっていきまっしょい。

魔法陣グルグル、レビュー。

 僕が小学校高学年の時にどハマリしてた漫画です。
 青春時代、いつもそばにはグルグルが……。(僕の青春は小学校で終わりました)

 個人的にグルグルは漫画誌に名を(小さく)残しても良い漫画だと思っています。僕にとって、それほど素敵な漫画です。
 もう何が素敵って、これが「日本一元気な少年漫画誌月刊少年ガンガン」で連載してたっていう事実が素敵です。
 
 言わずもがな、ガンガンってドラクエの戦闘AIシステム「ガンガン行こうぜ」から名付けられた雑誌ですが(発行元もエニックスでした)、ドラクエ的「冒険」を前面に押し出し、それを特色としていた雑誌です。ロト紋とかありましたし。
 それなのにグルグルってこのドラクエ的「勇者が魔王を倒して世界を救う」冒険世界へのツッコミ漫画であると思うんです。まさにガンガンでしか連載しえない、いや、連載する意義がある素敵漫画、掲載雑誌の特性をここまで生かした漫画を、僕は他に知らない……。

 ドラクエ的冒険世界へのツッコミって、なんの事?
 はい、御説明致します。

 一言で言えば、グルグルはドラクエのような勇者が魔王を倒す為に世界を旅する、いわゆる一般的なRPGの世界観を茶化し、読者と笑いを共有する事が大きな魅力であり作品の根幹になっています。

 作品冒頭、「勇者募集」という立て札を見た中年男が、「今の時代は魔王がいるから幸せだ」と魔王がいなかったが為に勇者になる夢を諦めざるおえなかった若かりし頃のその夢を息子に託すところから物語は始まります。
 「俺は勇者にはならないよーん」と息子はつっぱねますが、結局は強引に押し切られ、冒険に旅立ってしまいます。
 これだけで、もはやパロディ的笑いである事は疑い得ないと思います。
 そもそも作品一コマ目に出てくる主人公が住む村の名前が「ジミナ(地味な)村」。
 そのネーミングセンス、恐ろしい……!!

 他にも茶化している描写として例を挙げるならば、
「物語の攻略本が売られていたり」、
「物語がバグを起こしたり」、
「イベントが終わった後のダンジョンに魔王軍の幹部が左遷されたり」、
「光魔法・カッコイイポーズとかいうのがあったり」、
「勇者が魔王との最後の戦いの最中、急にウンコ行きたいと焦り出したり(それアリなのww)」、
「勇者が終盤手に入れる伝説の武器・勇者の拳が“ツッコミ”であったり(これは比喩でもなんでもなく、そのまま本当に「ツッコミ」なんです。)」、
 本当に枚挙に暇がないくらいに例を挙げられます。
 一体なんなのですかこの漫画は。
 素敵すぎる。

 ここで勇者の拳が「ツッコミ」であるという事実に注目して下さい。
 勇者・ニケは、冒険の途中、事ある毎に世界に対してツッコミを入れます(時にはニケがボケに回る事もありますが、この漫画ではボケるという事も世界へのツッコミでありえます)。
 僕達はそのニケのツッコミを共有する事でニヤニヤします。
 僕達の前提にある正当的なRPGの世界観を揺らがされるからです。
 だから「ああー。わかるー。」みたいに、まるでお笑い芸人が身近なあるあるネタで笑いを誘うような構造で、僕らはグルグルを楽しみます。  

 随所に挿入される作者のツッコミ的コメントも、まさにその茶化しを作者自身がツッコんでいるのであって、キャラに演じさせたボケを自身でツッコミ笑いを回収するわけで、なんともはや、この異化作用は凄いです。
 本気で唸ります。
 ううむ。
 
 そもそも作者の衛藤ヒロユキさんはドラクエ4コマ劇場出身の方で、出自からしてRPGの隙間を見つける事に特化した作家さんでした。
 そして始まったのがグルグル。
 ドラクエ世界へのツッコミという点でまるでブレがないです。
 ドラクエ四コマの延長線上に、確かにグルグルは位置していると思います。
 すばらしい。
 
 そして忘れてはならないのがキタキタ親父ですね。
 
 グルグルの内容は知らなくても、キタキタ親父なら知ってるという方も多いのではないでしょうか。 
 腰蓑一枚でピーヒャラーと踊る奇妙な禿げ親父は、それ程に強烈な印象を与えるキャラクターですが、まさにこの禿げ親父こそが作者のひとつの意思表明となっています。
 もはや、キタキタ親父がその場にいるだけで、シリアスな画にはなりえないのですから。
 
 これは本当にそうで、オヤジがいる為にこの漫画は「勇者が魔王を倒して世界を救う物語」を真面目に語る事を放棄せざる終えなくなってしまうのです。
 そしてこれを作者は自覚的に操っている。
 だって旅に同行させるんですもの。明らかに意図的なわけです。
 真面目に語ろうと思ったらあんなオヤジ出しません。

 グルグルの本質はツッコミ的パロディである。
 ですが、ここでご注意願いたいのは、僕がそのツッコミを「皮肉な攻撃的ツッコミ」とは言っていないという事です。
 そんなわけありません。 
 真逆です。
 「愛のあるツッコミ」だと思っています。
 そしてこれはグルグル読者皆様方にご納得して頂ける表現だとも思っています。
 
 僕らはグルグルを読んでも、ドラクエ的RPG世界を本当の意味で笑い物にしているわけではありません。
 むしろ愛でている。
 だから、ニケとククリと一緒にその世界になんだかんだとツッコミを入れていきつつも遂には魔王を倒した時、僕達は自然と「冒険の旅」であったと了承し、感動なぞしてしまいます。
 漫画最後のコマは『Thank you for piaying. THE END』という正にRPGゲーム風のカットです。
 作者と僕らは冒険を否定していたわけではない。
 作者と僕らは冒険のお約束を笑っていただけなのです。
 その笑いの根底には溢れんばかりの愛があります。
 僕らは冒険したいのです!

 なので、冒険を成し遂げたこの物語の結末に僕らが心動かされる事は、この漫画の根幹がパロディであったとしても、なんら矛盾にはなりません。
 それでいいのです。
 愛してるんだもの。
 (ただ、という事は結局のところ内輪受け的作品であるともいえるので、グルグルを正しく読む為には予めRPG的世界を知っていなければならないというお約束も発生してしまいます。ですが、それを知らなくともこの物語自体がRPGなので、例え笑いを共有できずとも感動はできると思います。)

 冒険を終えた後の寂寥感。
 これぞRPGの醍醐味ではないでしょうか。
 そんな胸を締め付ける寂寥感を、グルグルも与えてくれます。
 うう、せつなひ。