開店休業

がんばっていきまっしょい。

脚本「ロックとクロック」

二時間尺くらいの冒頭を想定して書きました。

【題材】時計

タイトル:「ロックとクロック」
 

(人物)

桜田鉄夫(19)浪人生
星宮冬子(18)高校三年生(回想時)
鈴木竜太(19)大学一年生
矢野明(19)音楽専門学校一年生
谷誠也(19)大学一年生
男子A
男子B
女子A
女子B
教員
受験生

 

〇音楽スタジオ
   桜田鉄夫(19)、鈴木竜太(19)、矢野明(19)、谷誠也(19)、が演奏をしている。
   桜田はギターボーカル。
   演奏が終わり各々水を飲み、汗を拭く。
矢野「やっぱメンバー揃うと違うなぁ。全然違うわ。さいっこう」
谷「なあ鉄夫、いつ受験終わんだっけ?」
桜田「来週。週末が二次試験だから」
矢野「……あれ、受験日違くね?」
谷「ああ、うちは来週末だけど」
桜田「いや、俺西大受けねえし」
矢野「……は?」
桜田「いや、『は?』じゃねーよ。言ってたべ俺東京行くって」
矢野「うそ、アレ本気だったの?」
桜田「いや、ってか俺今年はそこ一本だから」
矢野「マジ? 浪人で本願一本?」
谷「へぇ、東京のどこ受けんの?」
桜田「桜宮」
メンバーC「…………プッ」
   矢野と谷は笑い出す。
矢野「んなのムリに決まってんべ! 自分の頭考えろよ!」
桜田「はぁっ?! だから一年頑張ってきたんだろっ!?」
矢野「いやだって俺らの高校偏差値39よ? どう考えても無理っしょ」
谷「まあなぁ、桜宮はどう考えてもなぁ……。なぁ、マジで桜宮? なら西大にしようぜ。もう一年辛いべ、バンドやろうぜ」
桜田「あのなぁ……俺模試でA、いやB…………いやCなら取れるんだからな」
矢野「ホントかよぉ」
桜田「ホントだっての!」
矢野「だって…………なぁ?」
   矢野と谷は顔を見合わせ、笑う。
桜田「センターだって良かったんだぞ!」
矢野「つってもだって鉄夫だろ……」
鈴木「いや、鉄夫はマジだって。この一年マジで頑張ってたから」
桜田「……竜」
矢野「マジで? でもやっぱ無理じゃね?」
桜田「無理じゃねぇしっ!」
鈴木「いや、ほら冬子さんていたべ? 鉄夫と予備校同じだった。その子がさ、桜宮なんよ、だから鉄夫も同じ所行きたいって」
矢野「……ああ」
谷「あ、知ってる知ってる。広瀬すずみたいなかわいい子でしょ? あ~……確かに鉄夫なんかそんな感じだったっけ」
桜田「…………うっ」
谷「でも叶わぬ夢だべ。なあ?」
矢野「いやほんとに」
桜田「あのなぁお前らっ!」
矢野「だってよぉ鉄夫、だってお前去年西大ですら受からなかったんだぞ予備校通って」
桜田「それは……だって去年は悩んでたから」
矢野「悩んでた?」
桜田「いや、西大でいいのかって、星宮さんと同じじゃなくていいのかって……それで」
矢野「それで今年は同じ大学一本か」
   頷く桜田
矢野「そりゃ気持ちはわからんでもないけどよぉ、もっと現実見ないといかんべ。もう一年なんて親御さんも悲しむべ。なぁ、西大にしようぜ? バンドやろうぜ」
谷「うん、身の程を知るっつーのも大事な事だしさ」
桜田「あああもう何だってんだよ寄ってたかって! いいよぜってー受かってやるからな! 見てろよ! ぜってー受かるからな! 受かって東京で星宮さんとキャンパスライフ送ってやるからな! じゃあな!」   
   鞄を手にスタジオを出て行く桜田。 
矢野「ああ行っちゃった」
谷「え、どうすんのバンド? 鉄夫抜き?」
矢野「いや、また一年いるんでしょ? なら」
鈴木「ちょっ、俺も行くね!」
   鈴木、鞄を手に桜田の後を追う。

〇公園(夕)
   ブランコに座っている桜田、鈴木が近づく。
桜田「っんだよ無理無理言いやがって……」
鈴木「しゃーないでしょ、だって俺ら高校ん時バンドしかしてなかったじゃん」
桜田「そりゃそうだけど……」
鈴木「でも俺は鉄夫の頑張り知ってるし、応援してるよ。……でも本当に桜宮しか受けないのか? いくら何でもそれはちょっとさぁ……もっと受けた方がいいって。地元が嫌なら東京のどっかさぁ」
桜田「そんなん星宮さんに失礼だし、保険なんてかけたら」
鈴木「え? あ、いや、まあ、ううん……」
桜田「大丈夫だって。受かる、ぜってー受かるから、見えるし、俺と星宮さんのキャンパスライフ」
   前を見据えて力強く拳を握る桜田
   それを見て不安な表情の鈴木。  
 
桜田家・鉄夫の部屋(夜)
   団地の一室、ベッドに寝転がっている桜田。にやけて腕の時計を眺めている。
桜田「星宮さん…………」

〇(回想)カラオケボックス・個室
   桜田と男子A、B、星宮冬子(18)と女子A、Bが座っている。
男子A「はいじゃあ皆番号持ったね? 持ったね? はいじゃあオ~プ~ン!」
   各々手に持った紙を開く。
男子A「お、俺はめぐちゃんのか~」
女子A「あ、私のはね、じゃ~んマフラ~」
   女子A、男子Aにマフラーを渡す。
男子A「手編みの?」
女子A「受験生に時間ある訳ないでしょ」
   一同、笑う。
   桜田の紙には4の文字。
桜田「えっと……」
男子A「なになに、桜田君は?」
桜田「あっ、僕はあの、よ、4番で……」
冬子「4番? あ、私のだ」
桜田「えっ、星宮さんのっ?!」
冬子「うん、はいこれ」
   冬子、桜田に小包を渡す。
   空けると腕時計が入っている。
冬子「よかったら使ってね、それだったら男子でもおかしくないから」
女子B「えっ、ちょっ冬子……これ冬子が前に使ってた奴じゃん…………ひど」
冬子「え? いや大丈夫だって! ほら除菌タオルで拭いたし新品同然でしょ?」
女子B「プレゼント買うの忘れたでしょ……」
冬子「うっ……」
桜田「あっ、いや、あっ、僕あのこれでっ、これがいいです、はいっ!」
冬子「え、いいの?」
桜田「はい!」
女子B「桜田君は優しいねぇ、こんなので」
冬子「ありがと桜田君。でもまだちゃんと使えるからね?」
桜田「はい! もちろん使います!」
   冬子、桜田に優しい笑みを浮かべる。
桜田「うっ!」
   桜田、頬を染めて俯く。
男子B「うお、俺はベビースター二十袋だ」
女子B「ごめん、私もひどかった」
   皆の笑い声、恍惚の表情で冬子から貰った腕時計をさする桜田

〇(終わり)同・鉄夫の部屋(夜) 
   ベッドで腕時計を眺めている桜田
桜田「星宮さん、俺を護ってね…………」
   腕時計に口づけをして電気を消す。

〇桜宮大学・大教室
   机に座った桜田、受験生達。
教員「え~説明は以上ですが、もし途中退室される場合は速やかに知らせて下さい」
受験生「あの、すみません……」
教員「はい?」
受験生「あの、実は時計を忘れてしまったんですが、この部屋には時計は……」
教員「ああ、トラブル防止の為に時計は用意していません。持ち物にもありましたね? 申し訳ありませんが今回は時計なしでお願いします」
生徒A「あっ、……はい……」
   しょぼくれる受験生。
   桜田、腕の冬子の腕時計を見て頷く。
教員「では時間です。始めて下さい」
   一斉に問題用紙を開く受験生達。
   桜田、勢いよく問題に取りかかる。
   腕時計の針が進んでいく。
   桜田、一息吐いて腕時計を見る。
桜田「まだ二十分……よし!」
   再び問題に取りかかる。
   腕時計の針が進み、突然止まる。
   桜田、一息吐いて腕時計を見る。
桜田「よし、これならゆっくり確実に……今日調子いいなぁ」
   桜田、笑顔で問題を解いていく。
教員「はいそこまで。終了です」
桜田「……えっ?!」
教員「どうしました?」
桜田「えっ、だってまだ時間じゃ……」
   腕時計を見てギョッとする。
   動いていない腕時計。
教員「はい、では回収して行きます」
桜田「…………」
   教員に回収されていく答案用紙を呆然と見送る桜田
   腕時計を見る、動かない針。
   泣きそうな顔で問題を解いている桜田
桜田N「星宮さんの時計はその後ももうんともすんとも言わず、ペース配分を乱された俺は、その日の試験に、落ちた…………」

脚本「ルックアウト」

幼馴染ラブ失敗のお話です。

あと脚本の書き方的におかしな所もあるかと思いますので参考にはしないで下さい。あしからず、よろよんきゅー。

 

【題材】窓


タイトル:「ルックアウト」

 

(人物) 
岡崎勝(15) 高校一年生
藤堂紗綾(16) 高校一年生
男(16)

 

〇岡崎家・勝の部屋
   部屋に入ってくる岡崎勝(15)、鞄を置きカーテンを開け窓を開ける。
   向かいの紗綾の部屋の窓を見る。
   部屋のカーテンと窓は閉まっている。
岡崎「今日も遅いか……」
   岡崎、息を吐いて椅子に腰を下ろす。
   机に飾っている幼い岡崎と紗綾の写真を見る。

 

〇(回想)岡崎家・屋根(勝の部屋外)
   窓から身を乗り出している岡崎(7)。
   藤堂紗綾(8)が自室の外の屋根に降りている。
岡崎「ちょっ、危ないってばぁっ!」
紗綾「だいじょぶだいじょぶーっ!」
岡崎「だいじょぶじゃないよぉっ!」
紗綾「いっくよーっ! せ~~~のっ!」
   窓から手を離して駆け、跳ぶ。
紗綾「はっ!」
岡崎「あっ!」
   紗綾、岡崎家の屋根に着地する。
紗綾「ちょっ、とっ、わっ、とっ、うぅっ!」
   斜面で四つん這いになり動けなくなる。
紗綾「ちょっ、やばっ……」
岡崎「紗綾っ!」
   屋根に降り手を差し伸べる岡崎。
   紗綾、手を掴み引っ張り上げられる。
   窓によじ登り部屋に入る二人。

〇岡崎家・勝の部屋
   床にへたりこんでいる紗綾。
紗綾「びっくりしたぁ……はぁっ」
岡崎「もう何やってんだよぉっ!」
紗綾「でもできたでしょ?」
岡崎「そりゃできたけど……」
紗綾「これで夜でもママにバレずに来られるよ、ね?」
岡崎「え? う、う~ん……」
紗綾「大丈夫だって、次はもっとうまくやるから。だってもっと会いたいもん、ね?」
岡崎「…………うん」
   笑う紗綾、照れて微笑する岡崎。

 

〇(回想終わり)岡崎家・勝の部屋
   岡崎、写真を眺めながら溜め息。
岡崎「ずっと顔も見られてないな……ん?」
   紗綾の部屋のカーテンと窓が開き目をやる。
   笑顔で向かいあっている紗綾(16)と男(16)。
岡崎「…………えっ」
   二人は座り窓枠から外れ見えなくなる。
岡崎「男……?」
   窓に寄り目を瞑り聞き耳を立てる。
   時折響く笑い声。
岡崎「笑ってる……」
   険しい顔で部屋の中をうろうろする。
岡崎「嘘だろ……男…………?」
   ハッとして顔を上げ、
岡崎「そうだ屋根に飛び乗って……いやっ」
   机の上の携帯を取る。
岡崎「携帯だ携帯……」
   震える手で電話帳から電話をかける。
   紗綾の部屋を見ながら通信音を聞く。
   紗綾が部屋から出て行くのが見える。
紗綾の声「……はい?」
岡崎「おいお前何やってんだよ」
紗綾の声「……は?」
岡崎「は? じゃねぇよ! お前男連れ込ん で何やってんだよっ!」
紗綾の声「……えっ!?」
岡崎「危ないだろ、お前男なんて連れ込んだ らお前、あ、危ないだろっ?!」
紗綾の声「…………あっ!」
   紗綾が携帯を手に部屋に戻ってくるのが見える。
   窓に駆け寄り岡崎の顔を見て驚く。
(携帯から)男の声「どうしたの?」
紗綾の声「あ、ううんっ!」
   紗綾、窓を閉めカーテンを閉める。
岡崎「あっ!」
   プツッと音がして通話が切られる。
   かけ直すも電源が切られている。
岡崎「なんだよクソっ!」
   ゴミ箱を蹴りティッシュが散乱する。

 

〇岡崎家・玄関前
   制服姿の岡崎が立っている。
紗綾の声「いってきま~す」
   藤堂家から出てくる紗綾、岡崎に気がついてビクッとする。
紗綾「……何であんたがこんな時間に?」
岡崎「お前を待ってたんだよ」
紗綾「え?」
岡崎「昨日のアレ……アレなんだよ…………」
紗綾「何って……こっちが何でしょ? 何で人の部屋覗き見てるわけ?」
岡崎「は? 覗き見てなんてねぇよ……見えちゃったから……」
紗綾「なら別にほっといてくれればいいじゃない、関係ないんだから」
岡崎「関係ないってお前……っ!」
紗綾「いやだってそうでしょ? しかも何で電話までしてくんの? 意味わかんない、私だって男の友達くらい呼ぶわよ」
岡崎「だっておま……時間帯的に一人じゃねぇか!」
紗綾「だから何よ」
岡崎「何って……」
紗綾「あのね、試験週間だから一緒に勉強しようって、それだけ。なのに何なの? 保護者面してマジキモいんだけど」
岡崎「キモいって……」
紗綾「あ~だからもうやめてよそういうの~! そりゃ昔はママにも頼まれたかもしれないけどもう子供じゃないんだからさぁ、やめてよそういうのも~っ!」 
岡崎「紗綾……」
紗綾「せっかく高校で別々になれたのに……も~っ!」
岡崎「あっ!」
   紗綾、翻って駆け出す。振り向いて、
紗綾「ママに言ったら着信拒否だからね!」
岡崎「…………」
   走り去る紗綾を呆然と見送る岡崎。
岡崎「…………紗綾」

 

〇岡崎家・勝の部屋(夜)
   家電店の大きな袋を手に部屋に入ってくる岡崎。
   開封し三脚、ビデオカメラ、業務用の長いガンマイクを取り出していく。
岡崎「男は獣なんだぞ、紗綾…………」

 

〇岡崎家・勝の部屋(夕)
   カーテンを閉め切った暗い部屋でベッドに座りヘッドホンをしている岡崎。
   ベッドの側、カーテンの隙間から三脚に立てたカメラのレンズが覗き、僅かに開いた窓の隙間にはガンマイクの頭を据えている。ヘッドホンはカメラに繋がっている。
   体育座り、血走った目で息を潜める。
紗綾の声「う~ん、ここは…………」
男の声「ああ、ここは動名詞を目的語に取るんだよ、enjoyとかavoidとか」
紗綾の声「え~、to不定詞じゃだめなの?」
男の声「そういう決まりなんだって、もうそういうものだって覚えた方が早いよ」
紗綾の声「う~ん、まあそうかぁ……」
男の声「でもto不定詞しか目的語に取らない単語もあるよ」
紗綾の声「えっ、そうなの? ええ……」
男の声「そんなに配点無さそうだし飛ばしてもいいかもね」
紗綾の声「ん……でもありがと、さすがだね」
男の声「ま、東大目指してますから」
紗綾の声「さすが実力テスト二位は言う事違うなぁ。東大かぁ」
男の声「でしょ?」
   二人の笑い声がヘッドホンに響く。

 

〇藤堂家・紗綾の部屋
   丸テーブルに肩を並べて勉強している紗綾と男。
   男はジリ、ジリと紗綾に近寄る。

 

〇岡崎家・勝の部屋
   ベッドでヘッドホンを当てている岡崎。
紗綾の声「えっ?!」
   ドスンという音が響く。
   岡崎、目を見開く。
紗綾の声「ちょっ、どうしたの……?」
男の声「藤堂…………っ」
紗綾の声「あっ、ちょっ!? やっ!」
   立ち上がる岡崎。
岡崎「ほらきた! 紗綾っ!」
   カーテンに手を伸ばす。
紗綾の声「あっ…………んっ………………」
岡崎「っ!?」
紗綾の声「あっ、あっ…………あっ……」
岡崎「…………」
紗綾の声「ふっ、あっ、んっ、ちゅっ、ちゅるっ、あっ、ちゅっ、あっ…………」
岡崎「……………は」
   岡崎、腰が抜けた様にベッドに座る。
   耳のヘッドフォンを強く押さえる。
紗綾の声「やっ、あっ、そこぉ…………」
男の声「初めて? 力抜きなよ……」
紗綾の声「だめぇ…………」
岡崎「…………は……は……は……はぁっ」
男の声「ほら、こんなに濡れてきてる……」
紗綾の声「は、はぁっ、はぅううううっ!」
岡崎「はっ、はっ、はぁっ、はああっ……」
   一心不乱にズボンとパンツを脱ぐ。
紗綾「ああっ、あんっ、ああああんんっ!」
岡崎「うっ、ううっ……」
紗綾「好きぃ…………大好きぃ!」
岡崎「ううううううううううううっ!」
   涙を零しながら股間をしごく。

脚本「虚栄と思春期」

思春期の等身大のお話です。

 

【題材】鏡

タイトル:「虚栄と思春期」

(人物)

蛯名唯笑(13) 中学二年生
赤石舞(14) 中学二年生
坂上佑馬(14) 中学二年生
蛯名啓治(46) 会社員
蛯名麦(42) パート
蛯名実夏(8) 小学二年生

金閣寺庭園
   蛯名啓治(46)、蛯名麦(42)、蛯名実夏(8)、少し離れて蛯名唯笑(14)が歩いている。
   蛯名、金閣寺を見ながら立ち止まる。
蛯名「よし、ここで写真撮っとくか」
   鞄から一眼レフカメラを取り出す。
蛯名「ほら池の前に立って、金閣寺背にして」
   麦、実夏の手を取って位置に付く。
   唯笑、鞄を漁り出す。
蛯名「ほら唯笑」
唯笑「ちょっ、ちょっと待ってっ」
   唯笑、手鏡で髪を直し始める。
   色々な角度から確認し、小さく頷く。
蛯名「ほらぁ早くしろよ」
唯笑「うん……っ」
   唯笑、麦と実夏の隣に並ぶ。
蛯名「よしいくぞ。三、二、一…………」
実夏「………………お父さん?」
蛯名「唯笑ぇ、笑えよぉ」
唯笑「……え?」
蛯名「全然楽しそうじゃないぞ」
実夏「ああお姉ちゃんね、いっつもこうなんだよ。笑わないの、写真の時」
蛯名「え、そうなのか?」
麦「唯笑ね、顔が崩れるのが嫌なんだって」
蛯名「は?」
麦「ほら笑うと頬が盛り上がっちゃうから」
蛯名「んな事言ったら写真撮れないだろ」
唯笑「だってぇ……」
蛯名「いいから笑えよ、折角の家族写真なんだから」
唯笑「うん……」
   唯笑、ぎこちなく笑みを作る。
唯笑「……はい」
蛯名「よし、じゃあもっかいいくぞ。三、二、一…………」
   シャッターを切る音、金閣寺を背にした三人の写真。唯笑だけ歪な笑み。

〇市立第二中学校・渡り廊下
   ベンチに座っている唯笑、ポーチを手にしている。
   赤石舞(14)が歩いてきて唯笑に気が付く。
舞「唯笑、部活は?」
唯笑「お腹痛いから休んだ」
舞「生理?」
唯笑「…………」
   唯笑、小さく頷く。
舞「ふぅん」
   舞、唯笑の隣に腰を下ろす。
舞「あ、今度写真貼られるみたいだよ」
唯笑「何の?」
舞「ほらこないだの大会の。唯笑のもあるでしょ走り幅跳びの」
唯笑「ないよ。だって入賞もしてないもん」
舞「あーちゃうちゃう、多分全員のあんの。文化祭で学校行事の展示があんだけど、そこで貼られんの毎年」
唯笑「えっ、そうなの? …………ええ」
舞「何、どしたの?」
唯笑「写真…………」
舞「やなの?」
   唯笑、小さく頷く。
唯笑「きっと変な顔してるよ……いつ撮られたのかもわかんないし……」
舞「まあでもそりゃ競技中なんだから仕方なくない?」
唯笑「でも…………」
   唯笑、ポーチをいじって俯く。
舞「唯笑って写真あんま撮られたがらないよね。嫌いなの?」
唯笑「嫌いっていうか……なんか……」
舞「なんか何?」
唯笑「なんかいつも見てる自分と違うっていうか…………」
舞「いつも見てる自分? 鏡?」
   唯笑、頷く。
唯笑「鏡だともっとこう大分マシっていうか、まあ、うん……だけど写真だとこう…………」
舞「ああ鏡だとよく見えるって言うからねぇ」
唯笑「……えっ?」
舞「なんか自然とキメ顔しちゃうらしいよ、そういうの見たよ。パッと見て気に入らないと表情作り直しちゃうんだって。そんでそれを普段だと思い込んじゃうから写真だと違和感あんの」
唯笑「キメ顔……? でも普通の顔でっ」
舞「だからそれでも無意識に角度変えたり顎上げたりしてるんだよ。よく見たいって無意識に思っちゃうの、そういう事。本当にかわいい人はどんな角度でも笑っても怒ってもかわいいんだから」
唯笑「…………ぅ」
舞「いや別に唯笑がかわいくないとかそういう事言ってんじゃないよ? 唯笑の事かわいいって言う人だっているんじゃない? たださあ、鏡の自分っていうのは自己ベストな自分だから、写真のが人の目に近いでしょ」
唯笑「…………っ!」
   唯笑、ポーチを握り締めて俯く。
   頬は赤く染まり目は潤んでいる。
舞「よく見られたいって思い過ぎでしょ」
唯笑「……そんな事っ!」
舞「だってさあ、そんなすぐ顔赤くして、それって人の目を気にするからでしょ? 男子と目も合わせられないしクラスで発言もできないじゃん。すぐ顔真っ赤にしてさ、表情も固いし、いいカッコしようと思い過ぎなんだよ、自意識過剰」
唯笑「…………」
   唯笑、手で汗を拭う。
   舞、横目で見ながら水筒をあおる。
舞「まあ別に好きにすればいいけどさぁ……ああ、あとね、なんか写真持ってかれるらしいよ毎年」
唯笑「……?」
舞「写真。ほらモテる男子のとか持ってっちゃうんだよ女子が」
唯笑「……そうなの?」
舞「坂上のとか持ってかれちゃうんじゃない? 二百メートル一位だったし」
唯笑「あ、リレーも一位だったよ」
舞「坂上モテるしねぇ」
唯笑「……うん」
舞「唯笑のも持ってかれちゃうんじゃない?」
唯笑「えっ?!」
舞「冗談」
唯笑「…………っ」
   唯笑、俯いて顔を赤くする。
   舞、横目で見ながら水筒をあおる。

〇市立第二中学校・二年三組教室
   唯笑、坂上佑馬(14)を見つめている。
   坂上は友人達と談笑している。
唯笑(モノローグ)「確かに坂上君だったら写真写りなんて気にしないんだろうなぁ……」
   坂上と目が合う。
唯笑「うっ!?」
   唯笑、机に突っ伏す。耳まで火照る。
唯笑(モノローグ)「やっぱりよく見られたいって思ってるから気にしちゃうのかなぁ……」

〇唯笑の部屋(夜)
   ベッドに座り手鏡を持っている唯笑。
   真面目な顔、笑顔等表情を変え、それを様々な角度から見る。最後に変顔。
唯笑「……うううっ!」
   唯笑、布団に俯せに倒れ込む。
   
〇市立第二中学校・廊下
   文化祭の装飾が施された廊下と教室、多くの生徒と父兄が歩いている。
   唯笑、周囲を見回して教室に入る。

〇同・多目的室
   唯笑、教室に入ってくる。
   各行事の写真が展示されており、入口横の壁に陸上大会の写真がある。
   唯笑、写真を見ていく。
   写真にいくつかの空白。
唯笑「……坂上君のだったのかな……っと」
   唯笑、さらに写真を見ていく。
唯笑「あ」
   ユニフォーム姿で口を大きく開き、笑顔で友人に駆け寄る唯笑のアップ写真。
唯笑「…………」
   唯笑、苦い顔をして眉間に皺を寄せる。周囲を見回し、恐る恐る写真に手を伸ばす。
坂上の声「おお蛯名」
   唯笑、ビクッと震えて手を引っ込める。
   坂上が隣にやってくる。
唯笑「あっ、えっ」
坂上「俺の写真ある?」
唯笑「えっ?!」
坂上「写真」
唯笑「あっと……」
   坂上、写真を見ていく。
坂上「あれ、俺のなくね?」
唯笑「あの、これだったのかも……」
   唯笑、空白を指さす。
坂上「ええ? ひでっ」
   坂上、唯笑の写真に気が付く。
坂上「お、蛯名のもあんじゃん。ほら」
唯笑「あっ…………うん」
坂上「へぇ……いいじゃん」
   唯笑、目を丸くする。
坂上「いつもすましてるけどこんな顔もすんだな。いい写真じゃん」
唯笑「…………っ!」
   唯笑、俯いて真っ赤になる。
坂上「じゃな」
唯笑「あっ!」
   坂上、駆けて教室から出て行く。
   唯笑、それを見送る。小さく手を振る。
唯笑「…………」
   唯笑、ニヤァッとする。
唯笑「ふっ、ふふっ、ふふふふふふっ…………」
   自分の写真を見つめて笑みを浮かべる。

脚本「正常位」

 タイトルがとても良いと誉められました。ビビッときたなら読んで損はないと思います。登場人物名に他意はありません。(内輪向け発言)

 あとカクヨムの日帰りファンタジー短編コンテストに応募したので、よろしければぜひ。

kakuyomu.jp

 

【題材】盗む

タイトル:「正常位

(人物) 
橋本洋介(30) 工場アルバイト
相原恵(25) 会社員
町田智(26) 恵の恋人
貴宮(あてみや)忍(20) 無職
主婦A
主婦B
 

〇アパートエスポワール二階廊下・橋本宅前
   ドアが開き橋本洋介(30)が出てくる。同じタイミングで隣室のドアが開き相原恵(25)が出て来る。
橋本「あっ」
恵「え?」
橋本「ど、どうも……っ!」
恵「……はぁ」
   僅かにお辞儀をして階段を降りていく。
橋本「フッ、フフッ、フフフフッ……!」
   その背中を見送り笑みを抑えきれない。

〇アパートエスポワール前・道路
   歩いている橋本、ふと二階を見上げる。
橋本「あ、また!」
   ベランダの洗濯物に女性物の下着。
橋本「相原さんあんな無防備に……あれじゃ盗ってくれって言ってるようなもんじゃないか、もう………………」
   ジイッと見つめる。
橋本「…………ごくっ」
   喉が鳴り、首を振って歩き出す。

〇アパートエスポワール前・道路(夜)
   猫背で疲れた様子で歩いてくる橋本。
橋本「……ん?」
   落ちている女性物のパンツに気が付く。
橋本「これって……」
   ベランダを見上げる。
橋本「相原さんのだ……落ちちゃったんだ」
   パンツを見つめる。
橋本「…………ええいっ!」
   拾い上げる。
橋本「どうしよ、これ……」

〇アパートエスポワール・廊下(夜)
   階段を上がり廊下に出る橋本。
   恵宅のドアが開き恵が出てくる。
恵「あっ?!」
橋本「あ」
恵「ちょっ、それっ、それそれっ!」
橋本「あっ、いや、あっ、これはですねっ」
恵「ねぇやっぱりそうだったよ、ねえ!」
   家の中に呼びかける恵。
   恵宅から町田智(26)が出てくる。
町田「やっぱりか」
橋本「……え?」
恵「ほらねだから言ったでしょ。前からずっと私を見てたんだから」
町田「おい、お前何盗ってんだよ」
橋本「いや、ちょっ、あのこれは拾ってっ」
町田「嘘吐くんじゃねぇよお前!」
   胸ぐらを掴む。
橋本「ヒッ?!」
町田「恵が! どんだけ怖がって傷ついたかわかってんのかっ?!」
橋本「いや、だ、だから僕は、ちが……」
恵「うっ、ううううううっ……」
町田「泣くな恵、ちゃんと犯人わかってよかったじゃねぇか、な?」
   恵の肩を抱く町田。寄り添う恵。
橋本「あっ、お二人は、付き合って……」
町田「おい、今から警察呼ぶからな」
橋本「え?! いやだから話を、僕は拾ってっ」
町田「カーッまだしらばっくれんのかよ!」
橋本「ちょっ、待って、待って下さい! バイトクビになっちゃいますよぉっ!」
町田「知るかよ! 警察呼ばないと恵も安心できないだろうが!」
橋本「いや、でも僕は…………」
町田「どうしても呼ばれたくないってのか?」
橋本「やっと、続けられそうなのに……」
町田「なら、二十万だ」
橋本「……え」
町田「手打ち金だよ。わかったよ、そんなに警察嫌だってんなら俺らも鬼じゃねぇ、金で誠意を見せてくれればそれでいいよ」
橋本「え、何で、二十万なんて、だって僕は」
町田「じゃあ呼ぶか、ええ?!」
橋本「…………それは」
   唇を強く噛み、泣きそうに俯く。

〇公園
   ベンチに座っている橋本と貴宮(あてみや)忍(20)。
貴宮「成程、橋本さんの暗い顔の訳にはそんな理由があったのですか」
橋本「……うん」
貴宮「災難でしたね、冤罪なのに」
橋本「はぁ、どうしてこう運がないんだろう」
貴宮「……でも、本当に運ですかね」
橋本「……え?」
貴宮「全ては、仕組まれていたのでは」
橋本「それは、どういう」
貴宮「橋本さんは、ハメられたんです」
橋本「……いや、まさか」
貴宮「傍から聞く分には、そう思えます」
橋本「いや、いやいやっ、だって相原さんは清楚で可憐で、とても人を騙すようには」
貴宮「でもそれは橋本さんが作り上げた彼女です。橋本さんは彼女とまともに話もした事がない、そうでしょう?」
橋本「それは……」
貴宮「本当のその人なんてわからないものです。誰しもが皮を被って生きていますから」
橋本「皮を……?」
貴宮「お金は、払ってしまったのですか?」
橋本「うん、だって払わないと、バイト先に知られちゃうし……」
貴宮「そうですか。橋本さんは貴重な生活費二十万円を、彼女に騙し盗られてしまったのですね」
橋本「…………」
貴宮「そうは思いませんか?」
橋本「いや、そう、そうだよね……確かにアレは、出来過ぎていた……信じたくなんてないけど、アレは、アレは…………」
   強く拳を握り、振る。
橋本「糞ッ! 糞糞糞ッ! 良い子だなって思ってたのにっ! 糞がッ!」
貴宮「ねぇ、橋本さん」
   そっと耳打ちする。
貴宮「なら、本当に盗んでしまえばいい」
   ギョッとして顔を離す橋本。
貴宮「興味があったのでしょう?」
橋本「いや、君は何をっ?!」
貴宮「何、相手は屑です、何の遠慮もいりません。二十万も渡しているのですから、下着の一枚や二枚、バチは当たりません」
橋本「いや、だからって俺はそんな事する人間じゃ!」
貴宮「それに、「犯人は僕じゃなかった」と言えるじゃないですか。だってそうでしょう? 誰もお金まで渡して逃れた橋本さんが本当に盗むだなんて思わない。そうしたら「犯人は僕じゃない、他にいたんだ」と無罪を主張できるじゃないですか」
橋本「…………無罪を、主張……」
貴宮「勿論橋本さん次第です。でも、長い目で見れば彼女にとっても恐い思いをして、罪の罰を受けておいた方がよいと僕は思いますが…………」
   貴宮、立ち上がり会釈をして去る。
橋本「…………」
   項垂れる。しかし顔を上げ前を見据え、
橋本「っ!」
   強く拳を握る。

〇アパートエスポワール・橋本宅(夜)
   激しく息を切らして座っている橋本。
   目の前には女性物のブラとパンツ。
橋本「ふ、ふふ……懲りずに干してやがって、やっぱり盗まれたなんてブラフだったんじゃねぇか……怖がってたら干せるわけねぇもんなぁっ!」
   震える手でパンツを握り顔に近づける。
橋本「すぅっ、スゥウウウウウウッン…………ゴホッ、ゴホッ! ゴホッゴホッ!」 
   ブラの両方の膨らみを掴んで。
橋本「ハ、ハハッ、やった、やっちまった! ざまあみろ! 人を騙しやがって、てっきり清純な子だとばっかり思ってたけど、あの糞彼氏毎日ヤリまくってるんだろうが、フ、フヒ、フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」
   下着に顔を埋め満面の笑みを浮べる。

〇公園
   ベンチに座っている橋本と貴宮。
   橋本は震えている。
橋本「す、凄いスリルだった……! あ、はは、あの快感、あ、ああ、たまんない……」
貴宮「落ち着いて下さい、橋本さん」
橋本「ふ、震えが止まらないんだ、あ、ああ、あああ………」
貴宮「フフ、橋本さん、今凄くいい顔をしていますよ。活き活きとして、普段余程自分を押し殺して生きてらっしゃったんですね」
橋本「フ、フフッ……」
   満面の笑みで貴宮を見る。
貴宮「いいじゃないですか、自分を解放する事も時には必要です。閉塞感に、押し潰されないように」
橋本「……そ、そうだよね、フ、フフッ、フフフフフッ!」
   震えて笑う橋本、微笑する貴宮。

〇公園(夕)
   ベンチに座っている貴宮。
   主婦A、Bが通りかかる。
主婦A「ねえ知ってる? 最近下着ドロが凄い流行ってるんだって」
主婦B「知ってる知ってる、私の知り合いのうちもやられたって」
主婦A「気を付けないと、気持ち悪いよね」
主婦B「ホントホント、ゾッとしちゃう」
   去って行く主婦A、B。
貴宮「…………」
   立ち上がる。
貴宮「誰が、「俺はそんな事する人間じゃない」んでしょうねぇ……」
   貴宮、薄く笑い、歩き出す。

脚本「おばあちゃんのプレゼント」

初期?に書いたんですが、これを書けた事はけっこう自信になりました。
感動しました、とのお言葉を頂きました。

 

あと引き続きカクヨムに小説をアップしております。
現在は処女作にしてどこぞの奨励賞相当受賞作をアップしております。
よろしければぜひ。(雨が降ってる。というやつです。)

 

小説(あしなむ) - カクヨム

 

 

【題材】 一年間

 タイトル:「おばあちゃんのプレゼント

 

(人物)

関学(9) 小学三年生
関靖(45) 会社員
関香奈(39) 主婦 
関文子(81) 靖の母
近藤美姫(9) 小学三年生
鈴木達也(9) 小学三年生
斉藤哲(8) 小学三年生

 

 

〇関文子宅・縁側
   蝉がかしましく鳴いている。
   縁側に座り庭を眺めている関学(9)と居間でスイカを食べている関香奈(39)と関靖(45)。
香奈「学、スイカ食べなさいよ」
学「…………」
香奈「せっかくお婆ちゃんが買ってきてくれたんでしょ、あんたが食べたいって言い出したんだからね!」
学「…………」
香奈「学! 返事くらいしなさい!」
学「……いらない」
関「お前いい加減ふて腐れるのやめろよ」
学「いらない、食べたくない!」
関「お前なぁ……」
学「ねえねえ買ってよぉ! なんで買ってくれないの? 皆持ってるんだよ、僕だけ持ってないなんておかしいじゃん!」
香奈「おかしくないでしょ。それに欲しければ自分で買いなさいよ」
学「だってぇ、お小遣い使っちゃったし……」
香奈「なら誕生日まで待てばいいでしょ」
学「誕生日は冬でしょ! 今は夏だよ夏!」
香奈「知らないわよそんなの……」
関「学、お前気持ちはわかるけどもうちょっと成長しろよ。我慢しろ我慢」
学「ううううううっ!」
香奈「ほら、スイカ」
学「いらないっ!」
   そっぽを向く学、関文子(80)が居間に入ってくる。
文子「スイカ、おいしいべ」
香奈「あ、お母さん……。それがこの子ちょっとふて腐れちゃってて……」
文子「え?」
香奈「すみません折角用意して下さったのに」
文子「さっきのゲームのことかい?」
香奈「はい、デパートで見てからこうで」
関「いいんだよ母ちゃん、放っとけば」
文子「学、そんなにそのゲーム欲しいんけ」
学「…………」
文子「学」
香奈「ほら返事くらいしなさい!」
   文子は笑みを浮かべ、バッグから小包を取り出す。
文子「ほら、おばあちゃんからプレゼント」
学「…………」
香奈「あ、お母さん……」
文子「いいからいいから、年金入ったから」
学「あっ、あっ、あっ…………」
   身を乗り出して受け取る学、頷く文子。
学「ありがとうおばあちゃん!」
関「ほんと甘いな母ちゃんは」
   学は嬉々として包装を破いていく。
文子「いいんだよ、かわいい孫の笑顔が見たいんだから」
学「あっ!」
   三人は振り向く。
学「これ違う!」
文子「え?」
学「これ違うよ、僕が欲しかったのこれじゃない! これ前作だもん、違うよ!」
文子「え、だってさっきこれ欲しいって」
学「違うよ、これの最新作、これじゃないの! こんなのもう誰もやってないよ!」
文子「あ、そうなの……。ごめんね、お婆ちゃん間違えちゃってたんだね…………」
関「母ちゃん、レシートある?」
文子「捨てちゃったけど、大丈夫かねぇ……」
関「まあとりあえず行って……あ、バカ学っ」
   学は包装ビニールを破き説明書を取りだしていた。
学「ほらぁ、見てここ! 三年前!」
関「開けるなよおい~」
学「え?」
関「もう返品できないだろ……」
学「え、ええっ?!」
関「お前が悪いんだからな、諦めろ」
学「ええっ、なんだよそれ、なんだよぉっ!」
香奈「なんだよじゃないでしょ、せっかく買ってきてもらったのにその態度はなに?」
学「だってこんなのいらないもん!」
   ゲームを壁に投げつける学、ケースが割れてディスクが飛び出る。
文子「あっ……」
香奈「こらなにやってんの!」
関「おい学! お婆ちゃんに謝れ!」
学「やだ、知らない!」
   駆けていく学、二階に上がる音。
香奈「もうあの子は!」
   香奈がケースとディスクを拾う。
香奈「ごめんなさい、叱っておきますから」
文子「いや、いいけども、それより新しいの買ってやった方が……」
関「いいんだよ放っておけば。もうちょっとは我慢も覚えないといけないんだよ」
香奈「はい、本当にお気持ちで十分ですから」
文子「そうかい? そう、そう…………」
   文子は大きく息を吐き、悲しげに床の上の包装紙を見る。

 

〇関家・リビング(夜)
   香奈が電話をしている横で学がゲームをしている。
香奈「はい、はい……あ、学ですか? はい、今ゲームしてますけど……あ、ちょっと待って下さいね。学、お婆ちゃんが学と話したいって。学」
学「…………」
香奈「学っ」
学「今忙しいの!」
香奈「忙しくないでしょ、いいから出なさい!」
文子の声「あ、香奈さんいいから、いいから、聞こえたから、聞こえたから…………」

 
〇関文子宅・居間(夜)
   背中を丸めて受話器を握っている文子。
   窓向こうの庭では落ち葉が舞っている。

 

〇小学校・三年二組教室
   鈴木達也(9)と斉藤哲(8)が話込んでいる、生徒達は冬服で、哲はマフラーを巻いている。
   学が教室に入ってきて二人に気が付く。
学「あっ!」
   笑顔で二人の下へと駆ける。
鈴木「どうしたんだよニヤけて」
学「遂に買って貰ったんだ、ほら!」
   ランドセルを開けゲーム『アイアンナイト3』を取り出す。
学「昨日誕生日でね、やっと買って貰えたの、やっとだよやっと、これで皆と遊べるよ!」
鈴木「あー、アイアン3かぁ……」
   鈴木は斉藤をチラと見る。
斉藤「アイアン3はなぁ、もうなぁ」
学「え?」
鈴木「ほら、もうモンスター集めコンプしちゃったしさ、やる事ないんだよね。それにほら、これ買って貰って」
   机の中から『キングアニマル7』を出す。
学「あ、キングアニマル7」 
鈴木「そ、俺も哲も買って貰ってさ、これめっちゃおもろいから! 学も買って貰えよ」
学「え、ええ……でもこれ買って貰ったから」
鈴木「あー、そっか、そりゃ残念だなぁ……」
   山根武(8)が通りかかる。
鈴木「あ、武、アニマル7どこまでいった?」
   二人は山根の元へと行く。
学「…………」
   アイアン3を手に呆然と見送る学。
美姫の声「あ、アイアン3だ」
   学、振り返ると近藤美姫(9)がいる。
美姫「いいなぁ、私も欲しいんだけど今2をやってるんだよね。3は当分買えないなぁ」
学「え、2? 2をやってるの?」
美姫「うん、お兄ちゃんのなんだけどやってみたら面白くって。でも昔のでしょ、誰ともモンスターの交換できないんだぁ」
学「あっ、あっ、あっ」
美姫「ん?」
学「僕持ってる、持ってるよ2、持ってる!」
美姫「へー、2も持ってるの? けっこうやった? ならさ、モンスターくれないかな」
学「あっ、あっ、あっ、これからやるんだよ」
美姫「え、これから? その3は?」
学「いいんだよまずは2からだよ!」
美姫「まあそれはそうかもだけど……。へー、そっか、今からやるんだ……あ、ならさ、一緒にやろ? 私もまだ序盤だし、モンスター交換しあおうよ、ね? どうかな?」
学「あっ、あっ、うんっ、うんっ!」
   手を振って教室から出て行く美姫。
学「う、うへ、うへへへへ…………」
   いやらしい笑みを浮かべる学。

 

 

〇公園
   携帯ゲーム機を手にベンチに座っている学と美姫、公園は桜が満開。
   学は満面の笑みを浮かべている。 

 

〇関家・リビング(夕方)
   学が携帯ゲームを片手に入ってくる。
学「ただいまー! あっついよ外、汗だく!」 
香奈「おかえり。あのね、さっきね、電話があって、お婆ちゃんが」
学「あ、おばあちゃん? ああ、じゃあまた電話しよ! また今年も行くよって伝えたいし、そういえばありがとうも言ってなかったし!」
香奈「え、何の事? あのね、さっき電話があってね、お婆ちゃん亡くなったって」
学「……え」

 

〇文子宅、居間
   蝉の鳴声、学が仏壇の前に立っており、脇に骨壺、前に遺影が置かれている。
   鈴を鳴らし、手を合わせる。
   顔を上げ、遺影を見る。
   柔和な笑みを浮かべている文子の写真。
   口をへの字に曲げ、泣きそうに俯く学。

脚本「雨が降ってる。」

こんにちは。

今回の脚本は下記の掌編を脚本化したものとなります。

a674.hatenablog.com

脚本化のお手本のような作品ですね。惚れ惚れします。ええ。
よろしくお願い致します。
ちなみにいま人前に出しても恥ずかしくないかなと思えるものをカクヨムに纏めています。誰も来てくれず枕を濡らしているので是非是非お越し下さいませ。

小説(あしなむ) - カクヨム

 

【題材】 姉妹(兄弟)

タイトル:「雨が降ってる。

(人物)

永原歩(16)高校二年生
氷月鳴(14)中学三年生
氷月乃亜(14)(回想時)中学二年生

 

 

〇高校寮・外観
   雨が降っている。水溜まり。鮮やかな黄色の長靴が水溜まりを大きく撥ねる。

〇同・永原自室
   布団に寝転がりぼんやりと天井を見つめている永原歩(16)。雨音が響いている。
   ドアがノックされる。
永原「いいよ、入って」
   ドア開く。花とパンダ柄の子供っぽいレインコートに身を包んだ氷月鳴(14)が入ってくる。
鳴「やぁ、降ってるね外。びしょびしょだ」
永原「その割には楽しそうだね」
鳴「そう? 買ったばかりの長靴が履けたからかな。ほら」
   手に持つ長靴を見せる。鮮やかな黄色。
永原「鮮やかなイエロー」
鳴「そう、心躍るようなね」
   レインコートのボタンを外し始める。
永原「でもちょっと子供っぽくない?」
鳴「そうかな? そうでもないと思うけど。お姉ちゃんだって昔はよくこういうの履いてたし。あ、でも昔って事は子供っぽいのかな? まあいいじゃん好きなんだから」
   レインコートを脱いでしまう。   
永原「……どうでもいいけど傘にしたらいいのに。あのお気に入りの大人びた水色の傘はどうしたの?」
鳴「あんなのもう捨てちゃったよ、いつの話してるの? 今はレインコート派なの、雨を感じたいからね」
永原「雨を感じる?」
鳴「そう、雨を感じる。ねえ、レインコートと長靴ここに置いてもいい?」
永原「あ、うん」
   鳴、二つを玄関先に置く。
鳴「じゃあ、おじゃましまぁす」
   鳴、入って丸いちゃぶ台の前に腰を下ろす。永原、タオルを渡す。
   キッチンで紅茶をカップに入れ、渡す。
永原「煎れといたやつ。まだ熱いよ」
鳴「ありがと」
   鳴、紅茶を啜る。
鳴「あちっ!」
   舌を出してひいひい言う。
永原「大丈夫? 見つからなかった?」
   永原も腰を下ろす。
鳴「うん、見つからなかった。男子寮潜入ミッション、無事コンプリートしました」
   ブイ、と決めてみせる鳴。

   ×  ×  ×
   (フラッシュ)
   ブイ、と決めてみせる氷月乃亜(14)。
   決めてみせた後、照れて破顔する。
   ×  ×  ×

永原「…………」
鳴「……どうしたの?」
永原「……いや」
鳴「…………ふぅん」
   じぃっと永原を見つめる。
永原「髪、伸びたなぁと思って」
鳴「ああ、伸ばしてるもんね。だってあー君ロングのが好きでしょ?」
永原「え、そんな事ないよ」
鳴「いいよ知ってるから」
永原「いや、本当に」
鳴「じゃああー君覚えてる? 私が思い切ってショートにしてきた時、あー君ずっとぼんやりしてたんだよ? 二週間も。凄く挙動不審になってさ」
永原「…………いや」
鳴「お姉ちゃんと一緒にずっと伸ばしてたから、この際ショートにしてみようかなって思ってそうしたんだけど、あー君はさ、それを受け止めきれなかったじゃん。私だけの問題じゃないんだよこれは。あー君の為でもあるの。私と付き合うまでのあー君死んでたもん。私、あんなのもう見たくない」
永原「…………」
鳴「ねえねえ、後でお鍋食べよう? あー君とはまだお鍋つついたことなかったよね?」
永原「鳴」
   鳴を見据える。
永原「ねえ鳴、そういうのはよくないよ、よくない。僕が好きなのは鳴であってあいつじゃないんだから、あいつはもういないんだから、だからいいんだよそういうのは。鳴は鳴らしく僕と一緒にいてくれよ」
鳴「ありがと。でもいいから」
永原「ねえ鳴」
鳴「だってあー君私にキスする時お姉ちゃんにキスするつもりになってるでしょ?」
永原「…………なに言って」
鳴「ほら即答できなかった」
   鳴、紅茶をズズズッと啜る。
鳴「あちっ!」
   舌を出してはあはあ言う。

   ×  ×  ×
   (フラッシュ)
   紅茶を啜る乃亜。
乃亜「あちっ!」
   舌を出してはあはあ言う。
   ×  ×  ×

永原「…………」
鳴「いいよ、知ってるから。似てるもんね私達、本当にとってもよく似てる。でも嫌じゃないんだよ、私、お姉ちゃんの事大好きだったし、お姉ちゃんの事が好きなあー君も大好きだったから」
永原「…………そんなの」
   目を伏せる永原。
   鳴、永原に寄り添い頭を肩に乗せる。
鳴「私はいいもん、あー君が、求めてくれるなら……」
永原「……鳴」

〇(回想)神社・大木の下
   緊張の面持ちの乃亜。永原。
乃亜「ね、ねぇ歩……」

〇(回想)神社・大木の下
   緊張の面持ちの鳴。永原。
鳴「ねぇ、あー君……」
   唇をキュッと噛む。まっすぐ見据えて。
(鳴に乃亜の姿が重なって)
鳴・乃亜「私と、付き合って下さい。」

〇(回想終わり)高校寮・永原自室
永原「…………ごめん」
   鳴、少し寂しげな顔で。
鳴「……やめてよ」
永原「…………」
鳴「…………よしっ!」
   膝を叩いて立ち上がる。
鳴「さて、じゃあ鍋の材料買ってこようかな。ちょっと待っててねあー君、すぐ戻るから」
   永原、立ち上がり。
永原「僕も行こうか?」
鳴「いいよ雨なんだし。一人でいいよ」
永原「そう? なんだか悪いな」
   鳴、レインコートのボタンを留めながら。
鳴「あー君は雨音でも聴いてうとうとしてて。膝を抱えて、まるでお母さんのお腹の中にいるみたいに」
永原「なにそれ」
   長靴を取り。
鳴「雨の日の二度寝こそ至福だよ。ばいばい」
   ドアを開ける鳴。左右を確認し、走る。
永原「…………」
   永原ドアを閉め布団に寝転がる。雨音が響く。
   目を瞑り、大きく息を吐く。

〇同・階段前
   廊下を曲がった所で立ち止まる鳴。
鳴「………………すん」
   俯いて目をこすり、小さく鼻を鳴らす。

〇(回想)住宅街
   雨降りの中、永原(14)、乃亜(14)、鳴(12)が歩いている。乃亜は花とパンダ柄の子供っぽいレインコートに身を包み、鮮やかな黄色の長靴を履いている。鳴は大人びた薄い水色の傘をさしている。
乃亜「えいっ!」
   ジャンプして水溜まりを跳ね上げる。
鳴「もう、お姉ちゃん子供っぽい~」
乃亜「そう? いいでしょこれ。ほら、このレインコートに長靴、似合うでしょ? この鮮やかなイエロー、心躍らない?」
永原「似合うけど、レインコートだと顔にかからないか?」
乃亜「フフッ」
   手で顔を拭う乃亜。
乃亜「いいの、これで。雨を感じたいからね」
永原「雨を感じる?」
乃亜「そ、雨を感じる。傘よりレインコートの方が雨をいっぱいに感じられるでしょ?」
永原「はぁ?」
鳴「もう、また変な事言って……普通に傘にすればいいのに」
乃亜「いいの! レインコートの方がウキウキするんだから!」
   笑顔で空に手を広げてクルクルと回る。
永原「ウキウキって」
鳴「こんな雨なのにウキウキなんてしないよ」
永原「俺も、晴れのがいいけど……」
鳴「ね」
永原「うん」
乃亜「もう、雨を楽しもうっていうこの気持ちがわからないの?!」
   苦笑する永原と鳴。

〇(回想終わり)高校寮・永原自室
   目を開いている永原。布団の上膝を抱え丸くなっている。雨音が響いている。
永原「…………っ」
   ギュッと目を瞑り、一層丸くなる。
  
〇高校寮・外観
  雨が降っている。水溜まりに撥ねる雨。

カクヨムに小説を投稿しました。

以前どこぞにアップしていたものが消えていたのでカクヨムに再掲しました。

その時はかなり好評だったので質は悪くないと思います。

全国に一万人はいると思われる僕の熱心なファンの皆様方におかれましては既にお読みになられた事があるかもしれません。ごめんね。

よろよんきゅー

 

カクヨムサイト → 

kakuyomu.jp