開店休業

がんばっていきまっしょい。

脚本「needle」

先日、オリンピック候補選手がライバル選手のドリンクに異物を混入する事件が起きました。タイムリーな作品になりました。

【題材】復讐
 

タイトル:「needle」
 

(人物) 
佐伯美姫(13) フィギュアスケート選手
向島蘭(14) フィギュアスケート選手
三枝きい(14) フィギュアスケート選手
佐伯奏(かなで)(45) 美姫の母
佐伯祥子(77) 美姫の祖母
向島春菜(39) 蘭の母

〇スケート会場・控え室
   モニターを眺めている向島蘭(14)と向島春菜(39)。
   モニターにはリンク上でフィギュアスケートの演技を始めようとしている佐伯美姫(13)が映し出されている。
春菜「あの子、凄いわね」
蘭「……佐伯さんの事?」
春菜「始めてまだ二年なんでしょ? 天才じゃない。蘭なんて三歳からやってるのに、あの子がいるんじゃ世界ジュニアは無理ね」
蘭「そんな……酷いよ、まだ演技前なのに」
春菜「チッ、せめてもう一枠あれば……優勝じゃなくても選ばれる状況だったらね」
   春菜、大きく溜め息を吐く。
春菜「アヒルの子は所詮アヒルか……」
蘭「……ママ、大丈夫だよ。優勝するから」
春菜「蘭じゃ無理よ」
蘭「ううん、いいから見てて」
   蘭、モニターを睨む様に見つめる。

〇スケート場・観客席
   三枝(さえぐさ)きい(14)と佐伯奏(かなで)(45)がリンクの美姫を見守っている。
きい「美姫ちゃん、ファイト……っ!」
奏「ああ、大丈夫かな……」
きい「大丈夫! 美姫ちゃん天才ですもん!」
奏「でもあの子、今日は凄く意気込んで……。お婆ちゃんと約束したのよ、優勝して世界選手権に行くって」
きい「大丈夫! 美姫ちゃんなら向島さんでさえ敵じゃないですから!」
   音楽が響き演技が始まる。
   固唾を呑んで見守る二人。
きい「……あれ? 何か……」
   順調に演技をする美姫。ジャンプの姿勢に入る。
   力が入り手を握る奏。
   美姫、ジャンプする。着地に失敗し、尻餅を付く。
奏「あっ?!」
   立ち上がり演技を続行する美姫。
奏「あああミスっちゃった……」
きい「……やっぱり」
   その後の演技も精彩を欠き、終える。
   客席からの拍手にお辞儀をする美姫。
奏「ああ、意気込んでたから……」
きい「違う、あれは……」
   きい、立ち上がり駆け出す。

〇同・控え室
   座っている美姫。駆けてくるきい。
きい「美姫ちゃん!」
美姫「ああ、きい……」
きい「美姫ちゃん、足……」
美姫「…………」
   スケート靴を脱ぐ。足の裏に血が滲んでいる。
きい「やっぱり……豆でも潰れたの?」
美姫「いや、最初、画鋲が入ってて……」
きい「えっ?! いたずら?」
美姫「そうでしょ、それ以外ないし……」
きい「……やっぱり、もしかしたら」
美姫「え?」
きい「あのね美姫ちゃん、あの、私が演技終わって戻ってきた時にね、美姫ちゃんのスケート靴に何かしてる人がいたの。何かおかしいなとは思ってたんだけど、多分アレって……」
美姫「嘘ッ、え、何? 誰?」
きい「向島さん」
美姫「…………」
   二人、モニターを見る。演技を終え満面の笑みで歓声に応えている蘭。

   *   *   *

   戻ってきた蘭を春菜が迎える。
春菜「蘭偉い! 優勝できるよこのまま!」
蘭「だから言ったでしょ、ママ」
   蘭、座ってスケート靴を脱ぐ。
美姫「……ね、向島さん」
蘭「あ、佐伯さん。今日は不調だったの? 佐伯さんらしくなかったね」
美姫「ね、ちょっと話、いい?」
蘭「え? あ、うん。じゃあママ」
   美姫と蘭ときい、廊下に出る。

〇同・廊下
蘭「何?」
美姫「ねえ、私のシューズに画鋲入れた?」
蘭「……え?」
美姫「きいが見たって言ってるんだけど」
   蘭、きいを見る。
蘭「ねえ、何を見たの?」
きい「あ、えっと、あの、向島さんが、美姫ちゃんのシューズを触ってたのを……」
蘭「よくわからないけど、シューズに画鋲入ってて怪我したって事? だから何?」
美姫「だから、向島さんがやったんでしょ」
蘭「はぁ? バカ言わないでよ」
きい「じゃああの時何してたの? 何をやってたのかまでは見てないけど、あれは間違いなく向島さんだったよ!」
蘭「それは……間違えちゃっただけ」
美姫「人のシューズと間違えるわけない!」
蘭「そんなのわかんないでしょ!」
美姫「ねえ、今日はどうしても負けられなかったの! お婆ちゃんと約束してて……」
蘭「知らないしそんなの。ねえ、もう行っていい? 疲れてるんだけど」
   蘭、控え室に戻ろうとする。
美姫「ちょっ、待って!」
   腕を掴む。振り払われて。
蘭「しつこい! 人呼ぶよ?!」
美姫「……ぅ」
   控え室に戻る蘭。きい、美姫の横顔を見る。立ち尽くしている美姫。

〇病院・病室
   寝ている佐伯祥子(77)と隣で椅子に座り祥子の手を握っている美姫。
美姫「ごめんお婆ちゃん、負けちゃった」
祥子「いいの、来年の楽しみにしておくから」
美姫「……うん」

〇同・廊下
   美姫と奏、歩きながら。
美姫「ね、お母さん。お婆ちゃんが来年見させてねって」
奏「来年? 来年って、今度の世界選手権もどうかって話なの知ってるでしょ? 生きる力にして欲しいって、だから今年にこだわってたんじゃない」
美姫「……うん」
奏「まあ、仕方ないよ。お婆ちゃんも『それまでは』って楽しみにしてたけど」
美姫「…………」

〇葬儀場(夜)
   祥子の遺影と棺桶、佐伯家の面々。
美姫「…………」
   ぼんやりと笑顔の遺影を見つめている。
美姫「……ッ!」
   ガリッと唇を噛む。血が滲む。

〇スケート場(カナダ)
   行き交う人々。入口に立っている美姫、蘭と春菜がやってくる。
美姫「向島さん」
蘭「えっ、佐伯さんっ?!」
美姫「うん、調子はどう?」
蘭「いや、なんでここに……」
美姫「何でって、お母さんと一緒に来たの。今後の為にも現地に見に行こうかって」
蘭「ふぅん……」
美姫「それに、向島さんの応援もできるしね」
   笑う美姫。怪訝な表情の蘭。
春菜「ママ先に行ってるから。すぐに来てよ」
蘭「あ、うん……」
   歩いて行く春菜。
蘭「……じゃ、私も行くから」
   歩いて行こうとする。腕を掴む美姫。
美姫「ま、待って」
蘭「何?」
美姫「あの、えっとね……英語、できる?」
蘭「え?」
美姫「おトイレ、行きたくって……」

〇同・トイレ前
美姫「いやぁよかった! おトイレの場所全然わからなくって、聞くのも恐いし!」
蘭「ああそう……じゃ」
美姫「ちょっ、待って待って!」
蘭「何よぉ」
美姫「一緒に行こ?」
蘭「ええ? いいよ私は」
美姫「選手用のトイレ絶対込んでるって! いつもそうじゃん! ほら、じゃあ先行っていいから、荷物見てるから、ね?」
蘭「えぇ……」
   美姫、蘭から半ば強引にバッグを取る。
美姫「なるべく早くね」
蘭「……はぁ、一人で戻るの恐いだけでしょ」
   笑う美姫。トイレに入る蘭。
美姫「…………」
   バッグを漁りシューズケースを空ける。

〇同・観客席
   美姫と奏、演技中の蘭を見ている。
   辛そうな表情で涙を浮かべている蘭。
奏「向島さん、調子悪そうだね」
美姫「……ん」
   蘭、ジャンプし、転倒する。
奏「ああ……ね、おかしくない? 怪我?」
美姫「…………」
   演技終わり、お辞儀をする蘭。ハッとして美姫と目が合い、睨み付ける。
美姫「……お母さん、トイレ行ってくるね」
   席を立ち、廊下へ。
   フ、と笑みを零して。
美姫「下手な演技を怪我のせいにできるんだから、感謝してよね」 

脚本「ロックとクロック」

二時間尺くらいの冒頭を想定して書きました。

【題材】時計

タイトル:「ロックとクロック」
 

(人物)

桜田鉄夫(19)浪人生
星宮冬子(18)高校三年生(回想時)
鈴木竜太(19)大学一年生
矢野明(19)音楽専門学校一年生
谷誠也(19)大学一年生
男子A
男子B
女子A
女子B
教員
受験生

 

〇音楽スタジオ
   桜田鉄夫(19)、鈴木竜太(19)、矢野明(19)、谷誠也(19)、が演奏をしている。
   桜田はギターボーカル。
   演奏が終わり各々水を飲み、汗を拭く。
矢野「やっぱメンバー揃うと違うなぁ。全然違うわ。さいっこう」
谷「なあ鉄夫、いつ受験終わんだっけ?」
桜田「来週。週末が二次試験だから」
矢野「……あれ、受験日違くね?」
谷「ああ、うちは来週末だけど」
桜田「いや、俺西大受けねえし」
矢野「……は?」
桜田「いや、『は?』じゃねーよ。言ってたべ俺東京行くって」
矢野「うそ、アレ本気だったの?」
桜田「いや、ってか俺今年はそこ一本だから」
矢野「マジ? 浪人で本願一本?」
谷「へぇ、東京のどこ受けんの?」
桜田「桜宮」
メンバーC「…………プッ」
   矢野と谷は笑い出す。
矢野「んなのムリに決まってんべ! 自分の頭考えろよ!」
桜田「はぁっ?! だから一年頑張ってきたんだろっ!?」
矢野「いやだって俺らの高校偏差値39よ? どう考えても無理っしょ」
谷「まあなぁ、桜宮はどう考えてもなぁ……。なぁ、マジで桜宮? なら西大にしようぜ。もう一年辛いべ、バンドやろうぜ」
桜田「あのなぁ……俺模試でA、いやB…………いやCなら取れるんだからな」
矢野「ホントかよぉ」
桜田「ホントだっての!」
矢野「だって…………なぁ?」
   矢野と谷は顔を見合わせ、笑う。
桜田「センターだって良かったんだぞ!」
矢野「つってもだって鉄夫だろ……」
鈴木「いや、鉄夫はマジだって。この一年マジで頑張ってたから」
桜田「……竜」
矢野「マジで? でもやっぱ無理じゃね?」
桜田「無理じゃねぇしっ!」
鈴木「いや、ほら冬子さんていたべ? 鉄夫と予備校同じだった。その子がさ、桜宮なんよ、だから鉄夫も同じ所行きたいって」
矢野「……ああ」
谷「あ、知ってる知ってる。広瀬すずみたいなかわいい子でしょ? あ~……確かに鉄夫なんかそんな感じだったっけ」
桜田「…………うっ」
谷「でも叶わぬ夢だべ。なあ?」
矢野「いやほんとに」
桜田「あのなぁお前らっ!」
矢野「だってよぉ鉄夫、だってお前去年西大ですら受からなかったんだぞ予備校通って」
桜田「それは……だって去年は悩んでたから」
矢野「悩んでた?」
桜田「いや、西大でいいのかって、星宮さんと同じじゃなくていいのかって……それで」
矢野「それで今年は同じ大学一本か」
   頷く桜田
矢野「そりゃ気持ちはわからんでもないけどよぉ、もっと現実見ないといかんべ。もう一年なんて親御さんも悲しむべ。なぁ、西大にしようぜ? バンドやろうぜ」
谷「うん、身の程を知るっつーのも大事な事だしさ」
桜田「あああもう何だってんだよ寄ってたかって! いいよぜってー受かってやるからな! 見てろよ! ぜってー受かるからな! 受かって東京で星宮さんとキャンパスライフ送ってやるからな! じゃあな!」   
   鞄を手にスタジオを出て行く桜田。 
矢野「ああ行っちゃった」
谷「え、どうすんのバンド? 鉄夫抜き?」
矢野「いや、また一年いるんでしょ? なら」
鈴木「ちょっ、俺も行くね!」
   鈴木、鞄を手に桜田の後を追う。

〇公園(夕)
   ブランコに座っている桜田、鈴木が近づく。
桜田「っんだよ無理無理言いやがって……」
鈴木「しゃーないでしょ、だって俺ら高校ん時バンドしかしてなかったじゃん」
桜田「そりゃそうだけど……」
鈴木「でも俺は鉄夫の頑張り知ってるし、応援してるよ。……でも本当に桜宮しか受けないのか? いくら何でもそれはちょっとさぁ……もっと受けた方がいいって。地元が嫌なら東京のどっかさぁ」
桜田「そんなん星宮さんに失礼だし、保険なんてかけたら」
鈴木「え? あ、いや、まあ、ううん……」
桜田「大丈夫だって。受かる、ぜってー受かるから、見えるし、俺と星宮さんのキャンパスライフ」
   前を見据えて力強く拳を握る桜田
   それを見て不安な表情の鈴木。  
 
桜田家・鉄夫の部屋(夜)
   団地の一室、ベッドに寝転がっている桜田。にやけて腕の時計を眺めている。
桜田「星宮さん…………」

〇(回想)カラオケボックス・個室
   桜田と男子A、B、星宮冬子(18)と女子A、Bが座っている。
男子A「はいじゃあ皆番号持ったね? 持ったね? はいじゃあオ~プ~ン!」
   各々手に持った紙を開く。
男子A「お、俺はめぐちゃんのか~」
女子A「あ、私のはね、じゃ~んマフラ~」
   女子A、男子Aにマフラーを渡す。
男子A「手編みの?」
女子A「受験生に時間ある訳ないでしょ」
   一同、笑う。
   桜田の紙には4の文字。
桜田「えっと……」
男子A「なになに、桜田君は?」
桜田「あっ、僕はあの、よ、4番で……」
冬子「4番? あ、私のだ」
桜田「えっ、星宮さんのっ?!」
冬子「うん、はいこれ」
   冬子、桜田に小包を渡す。
   空けると腕時計が入っている。
冬子「よかったら使ってね、それだったら男子でもおかしくないから」
女子B「えっ、ちょっ冬子……これ冬子が前に使ってた奴じゃん…………ひど」
冬子「え? いや大丈夫だって! ほら除菌タオルで拭いたし新品同然でしょ?」
女子B「プレゼント買うの忘れたでしょ……」
冬子「うっ……」
桜田「あっ、いや、あっ、僕あのこれでっ、これがいいです、はいっ!」
冬子「え、いいの?」
桜田「はい!」
女子B「桜田君は優しいねぇ、こんなので」
冬子「ありがと桜田君。でもまだちゃんと使えるからね?」
桜田「はい! もちろん使います!」
   冬子、桜田に優しい笑みを浮かべる。
桜田「うっ!」
   桜田、頬を染めて俯く。
男子B「うお、俺はベビースター二十袋だ」
女子B「ごめん、私もひどかった」
   皆の笑い声、恍惚の表情で冬子から貰った腕時計をさする桜田

〇(終わり)同・鉄夫の部屋(夜) 
   ベッドで腕時計を眺めている桜田
桜田「星宮さん、俺を護ってね…………」
   腕時計に口づけをして電気を消す。

〇桜宮大学・大教室
   机に座った桜田、受験生達。
教員「え~説明は以上ですが、もし途中退室される場合は速やかに知らせて下さい」
受験生「あの、すみません……」
教員「はい?」
受験生「あの、実は時計を忘れてしまったんですが、この部屋には時計は……」
教員「ああ、トラブル防止の為に時計は用意していません。持ち物にもありましたね? 申し訳ありませんが今回は時計なしでお願いします」
生徒A「あっ、……はい……」
   しょぼくれる受験生。
   桜田、腕の冬子の腕時計を見て頷く。
教員「では時間です。始めて下さい」
   一斉に問題用紙を開く受験生達。
   桜田、勢いよく問題に取りかかる。
   腕時計の針が進んでいく。
   桜田、一息吐いて腕時計を見る。
桜田「まだ二十分……よし!」
   再び問題に取りかかる。
   腕時計の針が進み、突然止まる。
   桜田、一息吐いて腕時計を見る。
桜田「よし、これならゆっくり確実に……今日調子いいなぁ」
   桜田、笑顔で問題を解いていく。
教員「はいそこまで。終了です」
桜田「……えっ?!」
教員「どうしました?」
桜田「えっ、だってまだ時間じゃ……」
   腕時計を見てギョッとする。
   動いていない腕時計。
教員「はい、では回収して行きます」
桜田「…………」
   教員に回収されていく答案用紙を呆然と見送る桜田
   腕時計を見る、動かない針。
   泣きそうな顔で問題を解いている桜田
桜田N「星宮さんの時計はその後ももうんともすんとも言わず、ペース配分を乱された俺は、その日の試験に、落ちた…………」

脚本「ルックアウト」

幼馴染ラブ失敗のお話です。

あと脚本の書き方的におかしな所もあるかと思いますので参考にはしないで下さい。あしからず、よろよんきゅー。

 

【題材】窓


タイトル:「ルックアウト」

 

(人物) 
岡崎勝(15) 高校一年生
藤堂紗綾(16) 高校一年生
男(16)

 

〇岡崎家・勝の部屋
   部屋に入ってくる岡崎勝(15)、鞄を置きカーテンを開け窓を開ける。
   向かいの紗綾の部屋の窓を見る。
   部屋のカーテンと窓は閉まっている。
岡崎「今日も遅いか……」
   岡崎、息を吐いて椅子に腰を下ろす。
   机に飾っている幼い岡崎と紗綾の写真を見る。

 

〇(回想)岡崎家・屋根(勝の部屋外)
   窓から身を乗り出している岡崎(7)。
   藤堂紗綾(8)が自室の外の屋根に降りている。
岡崎「ちょっ、危ないってばぁっ!」
紗綾「だいじょぶだいじょぶーっ!」
岡崎「だいじょぶじゃないよぉっ!」
紗綾「いっくよーっ! せ~~~のっ!」
   窓から手を離して駆け、跳ぶ。
紗綾「はっ!」
岡崎「あっ!」
   紗綾、岡崎家の屋根に着地する。
紗綾「ちょっ、とっ、わっ、とっ、うぅっ!」
   斜面で四つん這いになり動けなくなる。
紗綾「ちょっ、やばっ……」
岡崎「紗綾っ!」
   屋根に降り手を差し伸べる岡崎。
   紗綾、手を掴み引っ張り上げられる。
   窓によじ登り部屋に入る二人。

〇岡崎家・勝の部屋
   床にへたりこんでいる紗綾。
紗綾「びっくりしたぁ……はぁっ」
岡崎「もう何やってんだよぉっ!」
紗綾「でもできたでしょ?」
岡崎「そりゃできたけど……」
紗綾「これで夜でもママにバレずに来られるよ、ね?」
岡崎「え? う、う~ん……」
紗綾「大丈夫だって、次はもっとうまくやるから。だってもっと会いたいもん、ね?」
岡崎「…………うん」
   笑う紗綾、照れて微笑する岡崎。

 

〇(回想終わり)岡崎家・勝の部屋
   岡崎、写真を眺めながら溜め息。
岡崎「ずっと顔も見られてないな……ん?」
   紗綾の部屋のカーテンと窓が開き目をやる。
   笑顔で向かいあっている紗綾(16)と男(16)。
岡崎「…………えっ」
   二人は座り窓枠から外れ見えなくなる。
岡崎「男……?」
   窓に寄り目を瞑り聞き耳を立てる。
   時折響く笑い声。
岡崎「笑ってる……」
   険しい顔で部屋の中をうろうろする。
岡崎「嘘だろ……男…………?」
   ハッとして顔を上げ、
岡崎「そうだ屋根に飛び乗って……いやっ」
   机の上の携帯を取る。
岡崎「携帯だ携帯……」
   震える手で電話帳から電話をかける。
   紗綾の部屋を見ながら通信音を聞く。
   紗綾が部屋から出て行くのが見える。
紗綾の声「……はい?」
岡崎「おいお前何やってんだよ」
紗綾の声「……は?」
岡崎「は? じゃねぇよ! お前男連れ込ん で何やってんだよっ!」
紗綾の声「……えっ!?」
岡崎「危ないだろ、お前男なんて連れ込んだ らお前、あ、危ないだろっ?!」
紗綾の声「…………あっ!」
   紗綾が携帯を手に部屋に戻ってくるのが見える。
   窓に駆け寄り岡崎の顔を見て驚く。
(携帯から)男の声「どうしたの?」
紗綾の声「あ、ううんっ!」
   紗綾、窓を閉めカーテンを閉める。
岡崎「あっ!」
   プツッと音がして通話が切られる。
   かけ直すも電源が切られている。
岡崎「なんだよクソっ!」
   ゴミ箱を蹴りティッシュが散乱する。

 

〇岡崎家・玄関前
   制服姿の岡崎が立っている。
紗綾の声「いってきま~す」
   藤堂家から出てくる紗綾、岡崎に気がついてビクッとする。
紗綾「……何であんたがこんな時間に?」
岡崎「お前を待ってたんだよ」
紗綾「え?」
岡崎「昨日のアレ……アレなんだよ…………」
紗綾「何って……こっちが何でしょ? 何で人の部屋覗き見てるわけ?」
岡崎「は? 覗き見てなんてねぇよ……見えちゃったから……」
紗綾「なら別にほっといてくれればいいじゃない、関係ないんだから」
岡崎「関係ないってお前……っ!」
紗綾「いやだってそうでしょ? しかも何で電話までしてくんの? 意味わかんない、私だって男の友達くらい呼ぶわよ」
岡崎「だっておま……時間帯的に一人じゃねぇか!」
紗綾「だから何よ」
岡崎「何って……」
紗綾「あのね、試験週間だから一緒に勉強しようって、それだけ。なのに何なの? 保護者面してマジキモいんだけど」
岡崎「キモいって……」
紗綾「あ~だからもうやめてよそういうの~! そりゃ昔はママにも頼まれたかもしれないけどもう子供じゃないんだからさぁ、やめてよそういうのも~っ!」 
岡崎「紗綾……」
紗綾「せっかく高校で別々になれたのに……も~っ!」
岡崎「あっ!」
   紗綾、翻って駆け出す。振り向いて、
紗綾「ママに言ったら着信拒否だからね!」
岡崎「…………」
   走り去る紗綾を呆然と見送る岡崎。
岡崎「…………紗綾」

 

〇岡崎家・勝の部屋(夜)
   家電店の大きな袋を手に部屋に入ってくる岡崎。
   開封し三脚、ビデオカメラ、業務用の長いガンマイクを取り出していく。
岡崎「男は獣なんだぞ、紗綾…………」

 

〇岡崎家・勝の部屋(夕)
   カーテンを閉め切った暗い部屋でベッドに座りヘッドホンをしている岡崎。
   ベッドの側、カーテンの隙間から三脚に立てたカメラのレンズが覗き、僅かに開いた窓の隙間にはガンマイクの頭を据えている。ヘッドホンはカメラに繋がっている。
   体育座り、血走った目で息を潜める。
紗綾の声「う~ん、ここは…………」
男の声「ああ、ここは動名詞を目的語に取るんだよ、enjoyとかavoidとか」
紗綾の声「え~、to不定詞じゃだめなの?」
男の声「そういう決まりなんだって、もうそういうものだって覚えた方が早いよ」
紗綾の声「う~ん、まあそうかぁ……」
男の声「でもto不定詞しか目的語に取らない単語もあるよ」
紗綾の声「えっ、そうなの? ええ……」
男の声「そんなに配点無さそうだし飛ばしてもいいかもね」
紗綾の声「ん……でもありがと、さすがだね」
男の声「ま、東大目指してますから」
紗綾の声「さすが実力テスト二位は言う事違うなぁ。東大かぁ」
男の声「でしょ?」
   二人の笑い声がヘッドホンに響く。

 

〇藤堂家・紗綾の部屋
   丸テーブルに肩を並べて勉強している紗綾と男。
   男はジリ、ジリと紗綾に近寄る。

 

〇岡崎家・勝の部屋
   ベッドでヘッドホンを当てている岡崎。
紗綾の声「えっ?!」
   ドスンという音が響く。
   岡崎、目を見開く。
紗綾の声「ちょっ、どうしたの……?」
男の声「藤堂…………っ」
紗綾の声「あっ、ちょっ!? やっ!」
   立ち上がる岡崎。
岡崎「ほらきた! 紗綾っ!」
   カーテンに手を伸ばす。
紗綾の声「あっ…………んっ………………」
岡崎「っ!?」
紗綾の声「あっ、あっ…………あっ……」
岡崎「…………」
紗綾の声「ふっ、あっ、んっ、ちゅっ、ちゅるっ、あっ、ちゅっ、あっ…………」
岡崎「……………は」
   岡崎、腰が抜けた様にベッドに座る。
   耳のヘッドフォンを強く押さえる。
紗綾の声「やっ、あっ、そこぉ…………」
男の声「初めて? 力抜きなよ……」
紗綾の声「だめぇ…………」
岡崎「…………は……は……は……はぁっ」
男の声「ほら、こんなに濡れてきてる……」
紗綾の声「は、はぁっ、はぅううううっ!」
岡崎「はっ、はっ、はぁっ、はああっ……」
   一心不乱にズボンとパンツを脱ぐ。
紗綾「ああっ、あんっ、ああああんんっ!」
岡崎「うっ、ううっ……」
紗綾「好きぃ…………大好きぃ!」
岡崎「ううううううううううううっ!」
   涙を零しながら股間をしごく。

脚本「おばあちゃんのプレゼント」

初期?に書いたんですが、これを書けた事はけっこう自信になりました。
感動しました、とのお言葉を頂きました。

 

あと引き続きカクヨムに小説をアップしております。
現在は処女作にしてどこぞの奨励賞相当受賞作をアップしております。
よろしければぜひ。(雨が降ってる。というやつです。)

 

小説(あしなむ) - カクヨム

 

 

【題材】 一年間

 タイトル:「おばあちゃんのプレゼント

 

(人物)

関学(9) 小学三年生
関靖(45) 会社員
関香奈(39) 主婦 
関文子(81) 靖の母
近藤美姫(9) 小学三年生
鈴木達也(9) 小学三年生
斉藤哲(8) 小学三年生

 

 

〇関文子宅・縁側
   蝉がかしましく鳴いている。
   縁側に座り庭を眺めている関学(9)と居間でスイカを食べている関香奈(39)と関靖(45)。
香奈「学、スイカ食べなさいよ」
学「…………」
香奈「せっかくお婆ちゃんが買ってきてくれたんでしょ、あんたが食べたいって言い出したんだからね!」
学「…………」
香奈「学! 返事くらいしなさい!」
学「……いらない」
関「お前いい加減ふて腐れるのやめろよ」
学「いらない、食べたくない!」
関「お前なぁ……」
学「ねえねえ買ってよぉ! なんで買ってくれないの? 皆持ってるんだよ、僕だけ持ってないなんておかしいじゃん!」
香奈「おかしくないでしょ。それに欲しければ自分で買いなさいよ」
学「だってぇ、お小遣い使っちゃったし……」
香奈「なら誕生日まで待てばいいでしょ」
学「誕生日は冬でしょ! 今は夏だよ夏!」
香奈「知らないわよそんなの……」
関「学、お前気持ちはわかるけどもうちょっと成長しろよ。我慢しろ我慢」
学「ううううううっ!」
香奈「ほら、スイカ」
学「いらないっ!」
   そっぽを向く学、関文子(80)が居間に入ってくる。
文子「スイカ、おいしいべ」
香奈「あ、お母さん……。それがこの子ちょっとふて腐れちゃってて……」
文子「え?」
香奈「すみません折角用意して下さったのに」
文子「さっきのゲームのことかい?」
香奈「はい、デパートで見てからこうで」
関「いいんだよ母ちゃん、放っとけば」
文子「学、そんなにそのゲーム欲しいんけ」
学「…………」
文子「学」
香奈「ほら返事くらいしなさい!」
   文子は笑みを浮かべ、バッグから小包を取り出す。
文子「ほら、おばあちゃんからプレゼント」
学「…………」
香奈「あ、お母さん……」
文子「いいからいいから、年金入ったから」
学「あっ、あっ、あっ…………」
   身を乗り出して受け取る学、頷く文子。
学「ありがとうおばあちゃん!」
関「ほんと甘いな母ちゃんは」
   学は嬉々として包装を破いていく。
文子「いいんだよ、かわいい孫の笑顔が見たいんだから」
学「あっ!」
   三人は振り向く。
学「これ違う!」
文子「え?」
学「これ違うよ、僕が欲しかったのこれじゃない! これ前作だもん、違うよ!」
文子「え、だってさっきこれ欲しいって」
学「違うよ、これの最新作、これじゃないの! こんなのもう誰もやってないよ!」
文子「あ、そうなの……。ごめんね、お婆ちゃん間違えちゃってたんだね…………」
関「母ちゃん、レシートある?」
文子「捨てちゃったけど、大丈夫かねぇ……」
関「まあとりあえず行って……あ、バカ学っ」
   学は包装ビニールを破き説明書を取りだしていた。
学「ほらぁ、見てここ! 三年前!」
関「開けるなよおい~」
学「え?」
関「もう返品できないだろ……」
学「え、ええっ?!」
関「お前が悪いんだからな、諦めろ」
学「ええっ、なんだよそれ、なんだよぉっ!」
香奈「なんだよじゃないでしょ、せっかく買ってきてもらったのにその態度はなに?」
学「だってこんなのいらないもん!」
   ゲームを壁に投げつける学、ケースが割れてディスクが飛び出る。
文子「あっ……」
香奈「こらなにやってんの!」
関「おい学! お婆ちゃんに謝れ!」
学「やだ、知らない!」
   駆けていく学、二階に上がる音。
香奈「もうあの子は!」
   香奈がケースとディスクを拾う。
香奈「ごめんなさい、叱っておきますから」
文子「いや、いいけども、それより新しいの買ってやった方が……」
関「いいんだよ放っておけば。もうちょっとは我慢も覚えないといけないんだよ」
香奈「はい、本当にお気持ちで十分ですから」
文子「そうかい? そう、そう…………」
   文子は大きく息を吐き、悲しげに床の上の包装紙を見る。

 

〇関家・リビング(夜)
   香奈が電話をしている横で学がゲームをしている。
香奈「はい、はい……あ、学ですか? はい、今ゲームしてますけど……あ、ちょっと待って下さいね。学、お婆ちゃんが学と話したいって。学」
学「…………」
香奈「学っ」
学「今忙しいの!」
香奈「忙しくないでしょ、いいから出なさい!」
文子の声「あ、香奈さんいいから、いいから、聞こえたから、聞こえたから…………」

 
〇関文子宅・居間(夜)
   背中を丸めて受話器を握っている文子。
   窓向こうの庭では落ち葉が舞っている。

 

〇小学校・三年二組教室
   鈴木達也(9)と斉藤哲(8)が話込んでいる、生徒達は冬服で、哲はマフラーを巻いている。
   学が教室に入ってきて二人に気が付く。
学「あっ!」
   笑顔で二人の下へと駆ける。
鈴木「どうしたんだよニヤけて」
学「遂に買って貰ったんだ、ほら!」
   ランドセルを開けゲーム『アイアンナイト3』を取り出す。
学「昨日誕生日でね、やっと買って貰えたの、やっとだよやっと、これで皆と遊べるよ!」
鈴木「あー、アイアン3かぁ……」
   鈴木は斉藤をチラと見る。
斉藤「アイアン3はなぁ、もうなぁ」
学「え?」
鈴木「ほら、もうモンスター集めコンプしちゃったしさ、やる事ないんだよね。それにほら、これ買って貰って」
   机の中から『キングアニマル7』を出す。
学「あ、キングアニマル7」 
鈴木「そ、俺も哲も買って貰ってさ、これめっちゃおもろいから! 学も買って貰えよ」
学「え、ええ……でもこれ買って貰ったから」
鈴木「あー、そっか、そりゃ残念だなぁ……」
   山根武(8)が通りかかる。
鈴木「あ、武、アニマル7どこまでいった?」
   二人は山根の元へと行く。
学「…………」
   アイアン3を手に呆然と見送る学。
美姫の声「あ、アイアン3だ」
   学、振り返ると近藤美姫(9)がいる。
美姫「いいなぁ、私も欲しいんだけど今2をやってるんだよね。3は当分買えないなぁ」
学「え、2? 2をやってるの?」
美姫「うん、お兄ちゃんのなんだけどやってみたら面白くって。でも昔のでしょ、誰ともモンスターの交換できないんだぁ」
学「あっ、あっ、あっ」
美姫「ん?」
学「僕持ってる、持ってるよ2、持ってる!」
美姫「へー、2も持ってるの? けっこうやった? ならさ、モンスターくれないかな」
学「あっ、あっ、あっ、これからやるんだよ」
美姫「え、これから? その3は?」
学「いいんだよまずは2からだよ!」
美姫「まあそれはそうかもだけど……。へー、そっか、今からやるんだ……あ、ならさ、一緒にやろ? 私もまだ序盤だし、モンスター交換しあおうよ、ね? どうかな?」
学「あっ、あっ、うんっ、うんっ!」
   手を振って教室から出て行く美姫。
学「う、うへ、うへへへへ…………」
   いやらしい笑みを浮かべる学。

 

 

〇公園
   携帯ゲーム機を手にベンチに座っている学と美姫、公園は桜が満開。
   学は満面の笑みを浮かべている。 

 

〇関家・リビング(夕方)
   学が携帯ゲームを片手に入ってくる。
学「ただいまー! あっついよ外、汗だく!」 
香奈「おかえり。あのね、さっきね、電話があって、お婆ちゃんが」
学「あ、おばあちゃん? ああ、じゃあまた電話しよ! また今年も行くよって伝えたいし、そういえばありがとうも言ってなかったし!」
香奈「え、何の事? あのね、さっき電話があってね、お婆ちゃん亡くなったって」
学「……え」

 

〇文子宅、居間
   蝉の鳴声、学が仏壇の前に立っており、脇に骨壺、前に遺影が置かれている。
   鈴を鳴らし、手を合わせる。
   顔を上げ、遺影を見る。
   柔和な笑みを浮かべている文子の写真。
   口をへの字に曲げ、泣きそうに俯く学。

カクヨムに小説を投稿しました。

以前どこぞにアップしていたものが消えていたのでカクヨムに再掲しました。

その時はかなり好評だったので質は悪くないと思います。

全国に一万人はいると思われる僕の熱心なファンの皆様方におかれましては既にお読みになられた事があるかもしれません。ごめんね。

よろよんきゅー

 

カクヨムサイト → 

kakuyomu.jp

脚本「氷湖にて」

スリル満点、ハラハラドキドキのお話です。

 

【題材】湖

タイトル:「氷湖にて

(人物) 
福山藤治(65) 無職
福山早苗(64) 無職
通行人A
通行人B

 

○湖
   一面凍り付いた湖、福山藤治(65)と福山
   早苗(64)が公道から歩いてくる。
   福山は手バネ竿を持っている。
福山「いやぁ~誰もいないぞおい! こんな景色を独り占め、贅沢だなぁ!」
早苗「でも、誰もいないって事はやっちゃだめって事なんじゃ……」
福山「そんな事ないだろ、別にいいだろ」
早苗「またそんな事言ってぇ……。危ないから調べて人がいる所にしましょ」
福山「危ない? 危ないってなんだよ、別にワカサギ釣るだけだろ」
早苗「危ないわよ冬の北海道なんだから……」
福山「あ~いつも煩い奴だなぁ。旅先で開放感に浸るってのがわかんないのかよ。ほらバッグ持ってろ、ポイント探してくるから」
早苗「あっ」
   バッグを早苗に押しつけ歩いて行く。
早苗「全く、いつも自分ばっかりで、私の意見なんて聞いてくれないんだから……」
福山「あ? なんだって?」
早苗「なんでもない!」
福山「いやぁ、しっかし寒いなぁここ! 冬の北海道ってのはこんななんだなぁ。香も凄い所に嫁いだもんだよおい。こんな所で、どんな孫が育つかなぁ……」
早苗「…………」
福山「さみぃい!」
早苗「ねぇ、でもどうやって穴空けるの?」
福山「え?」
早苗「だって、手じゃ無理でしょ氷」
   福山、足下を見る。
福山「……ああ、そうか、ドリル……」
早苗「ドリルがいるの? ほらぁ、何も準備しないからぁ」
福山「してるだろうがこの竿」
早苗「ねぇ、もうやめた方がいいって。ね、やるなら他の所で」
福山「…………」
   福山、周囲を見回す。
福山「あっ、ほらあそこ!」
早苗「え?」
福山「あそこ穴空いてるだろ! 誰かやってたんだよ、いやぁ有り難いなぁおい!」
早苗「ちょっ!?」
   構わずに駆けていく福山。
   早苗、大きく息を吐き後を追って歩く。
早苗「定年して毎日二人きり、香もいないし、ずっとこれが続くの……?」
   早苗、立ち止まり大きく目を見開く。
早苗「あっ?!」
   福山、足下の氷が割れ湖に落ちる。
早苗「ちょっ、あなたっ!?」
   駆け出す早苗。
   福山、水から這い出ようとするが氷が割れてまた落ちる。
早苗「もう何やってるのよぉ!」
福山「ちょっ、バッ、来るなっ! 来るなっ!」
早苗「来るなじゃないでしょちょわっ?!」
   早苗、足下の氷が割れ湖に落ちる。
福山「早苗っ!」
   早苗、手をバタバタさせる。
早苗「あっ、あっ、あっ!」
福山「落ち着け、いいか落ち着けよ早苗!」
早苗「あっ……あっ…………」
福山「ゆっくり、ゆっくり氷に掴まれ、脆くなさそうな所に!」
早苗「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………」
   早苗、ゆっくりと移動し氷に掴まる。
早苗「はぁああああっ、はぁあああああっ」
福山「よし、いいぞ、よくやった、よし……」
早苗「あなたぁ……」
福山「いいか、そのままだぞ、いいか!」
   早苗、大きく何度も頷く。
   福山、氷を伝いゆっくりと早苗の隣に。
   早苗、抱きつこうとする。
早苗「あああああっ!」
福山「馬鹿掴むな! 沈むだろっ!」
   早苗、ハッとして手を戻す。
早苗「人、人を……」
福山「人……」
   福山、周囲を見回す。誰もおらず、湖は木々に囲まれ公道も遠い。
福山「こりゃあ……」
早苗「誰かぁ! 誰かぁ!」
福山「…………」
早苗「誰かいませんかぁっ!」
福山「やめろ、体力がなくなる」
早苗「ええっ!?」
福山「こんなとこすぐに凍えて力がなくなる。ちょっとでも温存しろ」
早苗「でもっ、だったらどうやって……!」
福山「俺が、出る」
早苗「ええ?」
   福山、移動しつつ氷を叩いたり掴んだりする。
福山「この辺りなら……」
早苗「さっき割れてたじゃない!」
福山「今度は大丈夫だ……ふんっ!」
   福山、氷に付いた手に力を込めて体を持ち上げる。
   手元の氷が割れて湖に顔から落ちる。
早苗「あっ!」
福山「ぶはっ! くそっ!」
早苗「ちょっ、ねぇどうするのよ!」
福山「どうするって出るしかないだろ!」
早苗「割れるじゃない、どうやって出るのよ!」
福山「割れないとこ探すんだよ!」
早苗「割れないとこってどこよ!」
福山「だから探すんだよ!」
早苗「もうなんでこんな事にぃ…………」
   早苗、顔を歪めて泣き始める。
早苗「あなたが、あなたがこんなとこ……止めたのにぃ…………」
福山「…………」
早苗「だからやだって、やだって言ったのにぃ…………なんでいつもそうなのぉ? もうやだぁ……あああああ…………」
福山「…………すまん」
早苗「すまんじゃないわよ! どうするのこれ、死んじゃう、死んじゃうのにぃっ!」
   氷に突っ伏して泣きだす早苗。
   福山、俯き、呟く。
福山「人なんていない、上がるしかない……」
   福山、唇を噛む。氷を叩きながら進む。
福山「ううう……」
   震える手を見る。また進む。
   止まり、氷の上に手を付き少し体を持ち上げてみる。
福山「ここだ。早苗!」
早苗「えぇ?」
福山「ちょっと来てくれ!」
   早苗、ゆっくりと移動する。
早苗「もう、なんか、感覚が……くらくらして……人を…………人……」
福山「人なんていない……それよりほら、この辺りの氷は丈夫そうだ。湖の中心は薄いんだ、ここなら大丈夫だ……」
早苗「私、上がれない……」
福山「俺がやる……絶対やるから、助けるから、俺のせいなんだから……」
早苗「ええ……?」
福山「体力使うな、助かるものも助からなくなる。体力ないんだから、お前は……」
   福山、全身が小刻みに震えている。
   顔は青ざめ息も震えている。
   早苗の頭に手を乗せて微笑む。
福山「いつも通り、俺に任せろ」
早苗「…………藤治さん」
   福山、氷に手を付く。
福山「いくぞぉ、せぇえええええのおっ!」
   体を持ち上げ足を氷に乗せようとする。
福山「くっ、服が重いっ!」
   早苗、咄嗟に背を押す。
早苗「頑張ってぇ! 頑張ってぇえええっ!」
福山「んんんんんががあああああああっ!」
   氷に付いた腕が震える。足が持ち上がり体が氷上に上がりそうになる。
   氷上に付いた手と腕が大きく震える。
早苗「もう少しっ! もう少しっ!」
福山「ぐぅうううううううっ!」
早苗「あっ!」
   福山、右手が滑り氷に鼻を打ち付け湖に落ちる。
福山「ぶはっ! ごほっ! は、はあっ、はあっ、はあっ、はああっ!」
   氷に掴まる、鼻血が滴る。
福山「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」
早苗「……血が」
   放心している福山。
福山「う、うう、ううううっ…………」
   涙を零し始める福山。
早苗「…………ぁ」
福山「すまん、早苗、すまん、すまん…………」
早苗「…………」
福山「うわ、ああ、あああああああ…………」
早苗「…………」
   早苗、泣きそうに微笑み、そっと寄り添い手に手を重ねる。肩に頭を乗せる。
  
   目を閉じている早苗。
通行人Aの声「おお~いっ!」
早苗「…………ん?」
通行人Bの声「誰かいるんですかぁ~っ!?」
早苗「っ?!」
   早苗、ハッとして顔を上げる。
   遠くに通行人A、Bが見える。
早苗「くっ、かっ、かはっ!」
   声を出そうとして咳き込む。
   僅かに手を掲げて振る。
早苗「はっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」     
   顔を見合わせる通行人A、B。
通行人A「やっぱ人だ!」
通行人B「すぐ、すぐ救急連絡しますからっ!」
早苗「……っ!」
   満面の笑みを浮かべる早苗。
早苗「はぁ、ははっ、はぁ、はあああああっ!」
   早苗、笑顔で隣に顔を向ける。
   背を向けて浮かんでいる福山。

脚本「ともだちの帽子」

 

「お見事です」 との感想を頂いた作品。ハートウォーミングな名作である。

 

【題材】帽子

 

タイトル:「ともだちの帽子

 

(人物)

春日彗(9) 小学三年生
木下俊(9) 小学三年生
春日拓人(39) 証券会社勤務
春日優奈(39) 靴製造業パート

 

 

○土手下(夕)
   草が生い茂る中を歩いている春日彗(9)と木下俊(9)、木下はNYロゴのヤンキース帽子を被っている。
   春日が興奮して前方を指差す。
春日「あっ! あっ!」
   木下も見る、大きなカマキリがいる。
春日「ちょっ、何かある?」
木下「えっ、何もないよ」
春日「その帽子は?」
木下「え、これ? いや、これはやだよ……」
春日「なんでっ! いいじゃん早くっ!」
木下「ええ…………」
春日「あっ!」
   カマキリが飛ぶ。春日は後を追う。
春日「ちょっ、早く早くっ!」
木下「いやだよぉ……」
春日「あ~もういいやっ!」
   春日、静かに近づき手を伸ばす。
   カマキリが小幅に飛ぶ。
春日「あっ、あっ、ちょっ!」
木下「あっ!」
   春日、咄嗟に木下の帽子をかっ攫いカマキリに覆い被せる。
春日「やった!」
木下「…………」
春日「おっしゃ! ほら、捕まえた!」
木下「…………」
春日「ちょっとここで待っててくれな、俺すぐ虫籠取ってくるから!」
木下「え? あっ!」
   駆けていく春日、見送る木下。
   木下は無言で帽子を見つめる。

 

○土手下(夜)
   帽子の側で立っている木下、虫籠を手に駆けてくる春日。
春日「俊、まだいるよな?」
木下「……たぶん」
春日「よしよしよしっ」
   ゆっくりと帽子を捲り上げる春日。
   カマキリを摘まんで籠に入れる。
春日「しゃ~っ、ほら見ろよこれ! こんなでかいのめったにいないぞ!」
   ムスッとしている木下。
春日「ん? どうしたんだ?」
木下「僕の帽子……」
春日「あ、ごめん。ほら」
   拾い上げて木下に差し出す。
木下「……いらない」
春日「は?」
木下「もうその帽子、いらない」
春日「……何言ってんだ?」
木下「どうして僕の帽子使うの? 嫌だって言ったじゃん!」
春日「だってそれはお前……しょうがないだろカマキリが」
木下「嫌だって言ったじゃん! なんで勝手に使うんだよぉ!」
春日「お、怒るなよ」
木下「なんで勝手に使うんだよぉ!」
春日「なんでって……いいだろ帽子くらい。それにこれ俺があげたやつじゃん」
木下「知らないよ! 知らない知らない! うっ、ううう…………っ」
春日「え、おいなんで泣くんだよ! ほら」
木下「もういいよ! いらないってばぁっ!」
春日「あっ」
   駆けていく木下、呆然と見送る春日。

 

○春日家・リビング(夜)
   食卓を囲んでいる彗と春日拓人(39)と春日優奈(39)。
拓人「それはお前が悪い」
彗「えぇ~なんでぇ」
拓人「気に入ってた帽子だったんだろ」
彗「でもあれ俺があげたやつだよ」
優奈「むしろだからじゃないの? 貰って嬉しかったのにあんたに雑に扱われたから」
彗「えぇ~、なにそれ」
優奈「彗だってプレゼントをまさにその人にぐちゃぐちゃにして返されたら嫌な気持ちになるでしょ」
彗「でも、だってカマキリが……」
優奈「いいから、明日謝っておきなさい」
彗「ううん、も~っ」
   彗の頭をポンポンと撫でる優奈。
   彗はむくれたままご飯を頬張る。

 

○市立第三小学校・三年二組教室
   春日が入ってきて自席に着く。
   窓際の席の木下の背中を見る。
春日「……よし」
   帽子を手に木下の元へと向かう。
春日「俊」
   木下は窓の方を向いて顔を向けない。
春日「俊、昨日は悪かったよ。ほら、洗ってきたからさ、受け取ってくれよ」
木下「…………」
春日「なあ、俺が悪かったよ。なんならカマキリ持ってってもいいからさ、でももし子供産んだら欲しいけど……ほら、帽子」
   グイグイと帽子を押しつける春日。
   木下に払いのけられる。
木下「いらないって言ったでしょ」
春日「……なあ、謝ってるのにそれはないんじゃないか? なんだよ帽子くらいで」
木下「帽子くらい?」
   木下、立ち上がり春日を睨む。
木下「帽子くらいって何さ。僕の帽子だよ」
春日「でも元は俺があげたやつだろ」
木下「でも今は僕のじゃないか!」
春日「だから返すって言ってるだろ、ほら!」
木下「もういらないってば!」
春日「あっ」
   木下、手を払い帽子は床に落ちる。
   春日、帽子を拾い上げて、
春日「あ~そうですか! もういいよっ!」
   春日、廊下へと出て行く。木下、腰を下ろして机に突っ伏す。
   呆然としているクラスメート達。

 

○春日家・リビング(夜)
   食卓を囲んでいる彗と拓人と優奈。
拓人「彗、友達にちゃんと謝ったのか?」
彗「……謝ったよ」
優奈「どうしたの?」
彗「謝ったけど、許して貰えなかったんだよ!ごちそうさま!」
   食器をシンクに置いて部屋を出て彗、二階に上がる足音が響く。
   二人は顔を見合わせる。

 

○土手上(夕)
   ランドセル姿の春日が道路側から階段を上り土手上の道へ出ると買い物袋を抱えた木下と遭遇する。木下は帽子を被っており傘も持っている。
春日「あ」
木下「あ」
   目が合うが、すぐにお互いに外す。
   木下が歩き出し、少し遅れて春日がその後に続く。
   強風が吹き、草木が揺れ川が波打っている。グラウンドには水溜まりがある。
   木下は帽子を手で押さえる。
   無言で歩く二人。
春日「んっ」
   突風が吹き、春日は目を瞑る。
木下「あっ!」
   春日の横を帽子が転がっていく。
木下「あっ、あっ、」
   木下、帽子を追いかけて春日の横を駆けていく。帽子は土手を転がり落ちる。
   木下、土手の坂を駆け下りる。
木下「うっ!」
   濡れた草に足を滑らせて尻餅を付く。
木下「あ、ああ……」
   帽子はグラウンドの方へ飛ばされる。
木下「えっ?」
   春日、木下の横を駆け降りていく。
木下「…………彗君」
春日「ほっ!」
   春日、転がる帽子に手を伸ばす。が、寸でのところで届かない。
春日「あ~ちくしょっ!」
   帽子を追いかけて走りながら前のめりになってまた手を伸ばす。
春日「ぅおっ?!」
   ぬかるんだグラウンドに足を滑らせて前のめりに倒れる春日。   
   帽子は飛んで川に落ちる。
春日「あ~…………」
木下「ちょっ、彗君!」
   木下、慌てて駆けてくる。
木下「ちょっ、何やってるのっ?!」
   起き上がる春日に手を貸す木下。
春日「何って、お前帽子が」
木下「でも、だって僕らは……」
春日「んなの関係ないだろ、帽子が飛んでっちゃったんだから」
木下「…………うん」
   春日、自分の泥だらけの服を見て、
春日「あ~、母ちゃん怒るよなあこれ……」
木下「僕も一緒に謝るよ。僕のせいだもん」
春日「え、いいの? おおサンキュー!」
木下「サンキューなんて……」
   二人は川に浮かぶ帽子を見る。
春日「もうちょっとだったんだけどなぁ」
木下「いいよ帽子くらい……ごめんね……あ りがとう」
春日「ん? ああ…………あっ!」
   春日、ランドセルからNY帽子を取り出して差し出す。
春日「ほら、これ」
木下「…………帽子」
春日「まあだからさ……代りに使ってくれよ」
木下「…………っ!」
   満面の笑みになって受け取る木下。
   夕焼けを背に照れ臭そうに頭を掻く春日。